表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

271/362

慟哭

 ジルは大きく腹部を抉られるも、念動波で再びハイランドグリズリーを吹き飛ばした。バランスを崩したジルが膝をつくも、左手でなんとか体を起こそうとしていた。致命傷なのは、メロウにも一目で分かる。


「お父さん、動いたらあかん!」


 狼狽するメロウを見て、ジルはにっこりと笑う。


「この程度、かすり傷だ。昔はこれくらいよく負ったもんだ」


「何言うてんの! これ以上動いたら死んでしまう! 私が、私が戦うから!」


 メロウは震えながらもジルと倒れたハイランドグリズリーの間に立つ。


「大丈夫だ、メロウ」


 そう言って、ジルはメロウを後ろから優しく抱きしめる。


「何してんの、こんな時に!」


「昔はよくこうやって抱きしめてたもんだけど、すっかり少なくなったな」


 そう言って、ジルはメロウの頭を撫でる。


「なんで今そんなこと言って! もうええから! 休んでて。そうじゃないと……死んでまう……」


 メロウの目から涙が零れる。


「死ぬもんか……。お父さんの強いところ、見せてやるからな」


 ジルはそう言うと、立ち上がる。

 ハイランドグリズリーもジルを睨むと、襲い掛かる。

 怒り狂ったハイランドグリズリーは四本腕の爪で連撃を放つ。

 ジルは透明な壁でそれを防ぐ。いくら攻撃を重ねてもその壁が揺らぐことは決してない。


「効かんわ! その程度の攻撃などな!」


 ジルは壁ごと全身に一気に距離を詰める。

 ジルの念動力が、ハイランドグリズリーの首元に放たれる。

 首を絞められていることを感じ取ったハイランドグリズリーの顔が恐怖に染まる。


「ゴアア……」


 僅かな悲鳴が口から絞り出される。だが、ジルの攻撃が緩められることはない。


「メロウを泣かせるんじゃねえよ」


 次の瞬間、ハイランドグリズリーの首は百八十度回転し、巨体は地面に沈んだ。




 それと同時に、ジルもバランスを崩す。


「お父さん!」


 メロウが悲鳴のような声で、ジルの元へ駆けよった。


「お父さん、強かっただろ?」


 ジルは、笑いながら言う。


「うん、めっちゃ強かったで……誰よりも、格好良かった」


「そうだろう。へへ、すまねえなあ。一緒に行けそうにもねえ。だが、まあ俺みたいな五月蠅いのが居ねえほうがのびのびと出ていけ――」


「ちゃう! お父さんと、行きたかったんや……。それじゃないと、意味あらへん! 私な、毎日怪我して帰ってくるお父さんが心配やったんや。だから外の世界に出られたら……お父さんも平和に過ごせるって……思ってたんや。お父さん死んだら、意味あらへんやん……あほぉ」


 メロウは玉のような大粒の涙を流しながら、消え入るような声で言った。


「そうだったんか。お前は昔から優しい子だったもんな。お前は外に出て、俺の分も生きろ。お前なら、きっと外でもやっていける。だから、いつかメリー族が普通に外で生きていける世界を……」


 ジルの目が虚ろになっていく。


「いやや! 死なんでや! お父さん? お父さん! ねえ!」


 メロウはジルに必死で呼びかける。だが、返事は返ってこなかった。


「いやや……いや。いやああああああああああああああああああああああ!」


 メロウの慟哭が、ただ響き渡った。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!


評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  『復讐を誓う転生陰陽師』第1巻11月9日発売予定!
    ★画像タップで購入ページへ飛びます★
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ