威圧感
俺はもはや日課となる魔物との戦闘を終え、解体に移っていた。
「最近、メロウちゃん来ねえな」
エスターさんがこちらを見ながら言う。話し合ったらどうだ、とメロウを送り出して既に三日が経過していた。
「確かに。メロウもどうなったのか、報告するって言ってたのに来ませんね。もう三日も経つんですが……」
何かあったのだろうか。
『メロウは報告を忘れている?』
『ノー』
忘れてないのかよ。
『メロウは報告が面倒臭い?』
『ノー』
『メロウは報告したくない?』
『ノー』
ん? ならなぜ来ないんだ?
『メロウは報告したいけど、できない状況に居る?』
『イエス』
出来ない? なぜ? やはり、何かあったのか? 敵か? 魔物?
『メロウは囚われている?』
『イエス』
『魔物に囚われている?』
『ノー』
『敵対勢力に囚われている?』
『ノー』
俺はその後もメーティスに尋ね続け、状況を完全に把握した。
「おいおい……まじかよ。思ったより大変なことになってるな」
「メロウちゃんに何かあったのか?」
「ジルさんと二人で出ようとして、村人達に囚われたようです」
「……思ったより、たいへんなことになってんな。どうすんだ?」
「助けに。俺が行って、良くなるかは分かりませんが」
族長も愚かなことをしやがって。
俺はメリー族の村に向かった。
門番は俺の顔を見て、露骨に顔をしかめる。
「メロウは今、居ない。出直してこい」
「なら、族長に会わせてくれませんか? 居ますよね」
俺は極めて怒気を隠しながら言う。門番はちらりとエスターさんを見た後、溜息を吐く。
「ちっ、速く帰れよ」
門を通り抜け、俺は族長の元へ向かう。だが、こういう時に限って、会いたくない奴等に会ってしまうものだ。
前回絡んできた若者三人と鉢合わせしてしまう。
リーダー格の男が馬鹿にしたような顔で口を開く。
「何をしに来た、人間」
「族長と話に。メロウに会えたらすぐに帰るよ」
「メロウは居ない。とっとと帰れよ。殺されたいのか?」
「人間には関係ない」
「お前なんかと関わったがばっかりにな。あいつらも馬鹿な奴等だ。こんなゴミに誑かされるからあんなことに」
三人は矢継ぎ早に罵声を浴びせてきた。
馬鹿はどちらだ……!
俺は怒りで顔が歪むも、必死でこらえる。
ここで揉めたら、メロウやジルさんにも迷惑が掛かってしまうからだ。
だが、俺の様子を見て、リーダー格の男は笑いながら、俺の胸倉を掴む。
「なんだ、その目は。文句でもあるのか? ここで前の続きでもするか?」
「……いや、文句などない。放してくれ」
「じゃあ、反抗的な目つきすんじゃねえよ! この腰抜けがよお!」
リーダー格の男は俺の腹部を殴り飛ばす。
「ぐっ!」
俺はそのまま大きく吹き飛んだ。
効いた……。俺の耐久力自体は紙耐久のままなので尚更だ。
「前回より随分、腰抜けじゃねえか。俺も一発……」
取り巻きの男が俺に近づいてくる。
だが、間にエスターさんが入った。
「じゃれ合いならもう十分だろう? それともそれ以上をお望みか?」
と睨みつける。
「ちっ! 強い用心棒に守られてるからって、調子に乗りやがって。二度と来るなよ。次はこの程度じゃすまさねえぞ」
三人組はこちらを睨みつけながら、去っていった。
「ふう……随分嫌われてるな」
「あいつらはデミ聖国のことを知っているのかもな」
「そうかもしれませんね。行きましょう」
俺は立ち上がると、族長の家に向かった。
家の中に入れて貰い、意外とすんなりと会うことができた。
「族長、お久しぶりです」
俺は頭を下げる。族長は前回よりも更に冷たい顔でこちらを見つめている。
「久しぶりだね」
「単刀直入に聞きます。メロウとジルさん、どこ行った?」
俺の言葉を聞いた族長は、凍り付いたような顔になる。
「……さあ。私は忙しい。全員の場所など把握していないよ。用がそれだけなら帰ってくれ」
「族長、そちらにも色々事情があるのは知っている。だが、人を永遠に縛り付けることなんでできないんだぜ」
それを聞いた族長は溜息を吐く。
「どこから漏れたのか……。何も知らない人間が何をほざく! 誰のせいで、私達がここに居ると思っているんだ!」
族長はこちらを睨みつける。
「その件は……あってはならないことだと思う。俺はメリー族も、こちらで普通に過ごせるような世の中になって欲しいとも思っている。だが、だからといって、メロウとジルさんに何かするつもりなら、俺は決してお前を許さない」
「小僧が……一丁前な口を利きおって。前よりは強くなったようだが……とっとと失せろ。お前も殺し合いはしたくはあるまい」
族長はもうこちらに殺気を隠そうともしない。肌が痛い。圧倒的な威圧感。
覚醒者と対峙していることを感じさせる。
「言いたいことはそれだけだ」
俺はそう言って、踵を返す。
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