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もう大丈夫

 メロウは静かに家の扉を開ける。


「ただいま」


 どんな顔をしていいか分からないメロウは、とりあえず目を下に向けた。


「メロウ! お前……無事でよかった。とりあえず座れ」


 メロウは父のその態度に違和感を感じつつ、椅子に座る。


「お父さん、あのな。さっきは……」


「いや、メロウ。まずは俺から謝らせてくれ。今までお前に隠していたことがある。すまなかった」


 ジルはメロウに頭を下げる。


「それって、外に出てはいけない理由か?」


「ああ。今こそ話そう。なぜメリー族が大魔境に籠っているのか。なぜ、外に出てはいけないのかをな」


 ジルはそう言って、メリー族がなぜ大魔境に籠っているのか。その歴史を一から話し始めた。

 メロウは驚きつつも、ただ黙ってその話を聞いていた。


「そんなことがあったんか……。そんなん、あんまりやんか! ずっと国のためにお父さんも、お母さんも、族長も皆頑張ってたんやろ? なのに……」


 メロウは話を聞いた後、大きく声を荒げた。


「今はどうなっているかまでは分からんが、デミ聖国は我々メリー族に懸賞金をかけていた。一千万Gだ。そのような危険もある。我々上の世代は、正直人間を憎んでいるんだ。尽くした相手に裏切られたトラウマを、未だに抱えている。メロウも外に出たら命を狙われ、蔑まれるかもしれない。奴等の我々を見る目は、未だに忘れられんのだ。メロウ、お前はそれでもまだ外に出る意志はあるか?」


 ジルはそう言って、メロウを見つめる。

 だが、メロウの目は曇らず、まっすぐにジルを見つめていた。


「出る。私はメリー族の境遇を変えるためにも、出なあかんと思ってる。正直、デミ聖国のしたことは許せへん。けど、それだけで人間皆嫌いになんてなれへん。良い人もいる。悪い人もいる。それだけや。憎むにしても人間ってくくりだけで憎まずに、その人となりと関わって、私は憎みたい」


 メロウははっきりとジルに告げる。

 その覚悟の決まった表情を見て、ジルはふう、と息を吐く。


「そうか。なら何も言うまい。だが、お前だけでは心配だ。俺もついて行く。お前が一人前になるまではな」


「ほんま⁉ 外出るの認めてくれるん⁉ お父さんも来てくれるんや! やったー!」


 メロウはピョンピョンと飛び跳ねる。


「ああ。掟のこともある。俺から族長に相談しよう。一緒に出れるようにな」


「嬉しいけど、大丈夫なん? 誰も今まで出ていったこと無いんやろ?」


「それは誠心誠意伝えるしかないだろう。俺もあいつとは長い。最後には認めてくれるさ」


「ならええんやけど。なんで急に認めてくれたん? あんな反対しとったやん」


「出たい者をいつまでも止め続けることはできんだろう。一人で行かせるよりは、な。それに……俺も彼等と話して、ずっとここに引き籠るだけの生活で良いのか、と思った。いつまでも人を憎みここで過ごすよりも、普通に過ごす未来を見たいと、思ったんだ」


 ジルはそう、ぽつりと言った。まだ迷っていた。この決断は皆への裏切りではないのかと。

 だが、メロウを一人で行かせるなんて考えられなかった。

 そして、メロウの言うことは正しいとも。


「行こう、父さん」


「ああ。明日、早速話してくるよ」


 メロウは、その日笑顔で布団に入ったが、笑いをこらえることができなかった。


「やった……。遂に出れるんや、お父さんと。これでもう大丈夫なんや……!」


 メロウは、布団の中で、そう呟いた。

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