表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/362

逃げ

 少しして、美しい金髪を靡かせ歩いているイヴを見つけた。


「イヴ! 今すぐ町を出よう! 二日後昼にグランクロコダイルというB級魔物がこの町を襲ってくる。ここは危険だ!」


 俺の切羽詰まった雰囲気を感じ取ったイヴが困惑する。


「えっ? どういうこと? ちゃんと話してくれないと分からないよ」


 イブに俺のスキルのこと、魔物達がこの町を襲ってくることを伝えた。イヴはただ俺の話を聞いてくれている。


「俺のスキルが、本当に『神解』か証明して見せる。俺が知らない情報で、イエスかノーで答えられる質問をしてくれないか?」


「えっ? えーっと、私の年齢は十六?」


「イエスだ」


 俺の返事を聞いたイヴが驚いた顔をする。


「私の実家は、グランデル子爵家?」


「ノー」


「ノースガルド伯爵家?」


「イエス」


 俺の返事を聞いたイヴがこのことも知ってるんだ、と呟く。


「私は左太ももに小さなほくろがある?」


 イヴは少し顔を赤くしながらも尋ねる。


「イエスだ」


「じゃあ、私に恋人はいる?」


 顔を真っ赤にしながらイヴは俺に尋ねる。


「えっ……の、ノー」


 それを聞いたイヴが顔を膨らませる。


「合ってるけどー! 断言されると悲しいよ!」


「いや、別にいないだろうって思った訳じゃないから!」


「まあ、私が聞いたんだから、良いんだけど。それにしても本当にイエス、ノーなら何でも分かるんだね。ほくろのことなんて、誰も知らないし。私は信じるよ」


 イヴは少し驚くも、信じてくれた。


「ありがとう、イヴ! なら早く逃げ――」


 イヴは右掌を俺の前に差し出して、顔を振る。


「ごめんね、シビル。貴方だけ逃げて」


「やっぱりこんな怪しいこといきなり言われても困るよね」


 やはり信じてくれてないのだろうか。だが、ここはなんとしても信じて貰わないといけない。


「違うわ。貴方が本当のこと言ってることは全く疑ってなんてない。魔物はきっと来るんだと思う。でも私は逃げられない。騎士団では疎まれて今はこの町に飛ばされてるけど……私は騎士だから。領民が居るのに逃げる訳にはいかないわ」


 優しくもはっきりと言われてしまった。


「そっか……」


「シビルは逃げて。せっかく商人として頑張ってるんだから。ここじゃなくてもあなたならやれるわ」


「イヴ……。どうか命だけは。無理だけはしないでくれ」


「ありがとう」


 無理をしないとは言わなかった。きっと彼女は命がけで町民を守るんだろう。彼女はそう言う人だ。だが俺は逃げて欲しかった。

 無理やり逃がすわけにもいかないので、後ろ髪を引かれつつもイヴと別れ露店に戻った。露店の商品は全て片付けられており、屋台自体も既に分解され片付けられ始めていた。


「おかえり、シビル。はやく用意して、隣町であるダブロンに逃げるわよ。まだ商店の契約をしてなかったのが、幸いだったわ。してたら大損。商品も全部持っていけばいいし、護衛としてディラー達を連れていくわ。既に話はつけてある。夜には出るから。町が破壊されたら、おそらく町民もダブロンに流れ込む。それまでに食料を買い込むわよ」


 既に殆どの手続きを終えているらしい。素晴らしい対応の速さだ。


「えっ? ああ、そうだな……」


「なによお、あんたが言ったんだからしっかりしてよ。本当にくるんでしょう?」


「ああ。間違いなく」


 自分の言ったことを全く疑ってないことが嬉しかった。


 これでいいのか? 俺の心には大きなしこりができている気がした。


 だが、俺が残っても何もできないだろう。


「用意終わったら行くわよ」


「ああ……」


 俺はネオンに促されるまま、逃げ準備を始める。荷物自体はそう多くないためすぐに終わった。ネオンが借りてきた馬車に商品と、屋台の部品を乗せる。護衛であるディラー達も合流する。


「随分急な話だねえ。まあ俺達は金さえもらえりゃ護衛はしますよ。ダブロンまでよろしく頼むぜ、大将」


「こちらこそよろしくお願いします」


 ディラーはまだ俺のスキルには半信半疑だろう。だが、仕事自体はダブロンまでの護衛だ。特に動揺もなく飄々としている。


「じゃあ、もう行くわよ!」


 ネオンの号令と共に、俺達はデルクールを出るため馬車を走らせた。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!


評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  『復讐を誓う転生陰陽師』第1巻11月9日発売予定!
    ★画像タップで購入ページへ飛びます★
html>
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公、いくらスキルのことを信じたとしても、この決定自体は迷いますよね… [一言] イヴたん、どうなってしまうんや…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ