冬来る
「ミスリルゴーレムか。初めて見たな」
ミスリルゴーレムはA級らしい。全長八メートルを超える巨体は圧巻の一言だ。持っている棍棒が既に三メートル以上ある。一振りで何人も葬ることも可能だろう。
全身ミスリルの体は、並の者では傷一つ付けられないだろう。弱点らしい弱点も無し。
「その鉄壁が自慢な訳ね。付与矢・【迅雷】」
俺は矢に稲妻を纏わせ、放つ。流石はA級というか、稲妻の如き速さの一撃に反応し、その右腕で弾いた。だが、その手には確かに傷がついた。
「本当に硬いな。流石。じゃあ、力比べと行こうか。俺の矛と、お前の盾、どちらが強いか」
『使うのか?』
ランドールの声が脳内に響く。
『ああ……。奴の硬さは、いい練習台になる』
俺は矢を構えると、ありったけの魔力を矢に込める。ただ魔力を込めるだけではない。高純度に、研ぎ澄ませるように。矢は煌々と白く輝き始める。
「付与矢・【白龍】」
俺の放った矢は、白き龍の如き魔力を纏いながらミスリルゴーレムの元へ襲い掛かる。まるで獲物を見つけた龍のように。
ミスリルゴーレムのその魔力を感じ取ったのか、両手を体の前で交差し防御態勢を取る。
矢がミスリルゴーレムに触れる。その矢はその手も、体も全てを消し飛ばした。
凄まじい風圧が、俺の頬を撫でる。
残ったのは、ミスリルゴーレムの足だけだ。
「やりすぎたか」
ぽつりと呟いた。
「良い一撃だ。あの硬さをいともたやすく貫くとは。この一ヶ月、威力とスキル強化に特化した成果が出てるな」
と拍手しながらエスターさんが現れる。この人、見てたけど助けにすら来ねえよ。
俺は無言で、矢をエスターさんに放つ。
それとほぼ同時に、エスターさんがこちらに斬撃を飛ばして来た。俺の矢と、エスターさんの斬撃が交差し、爆ぜる。お互いの攻撃は微妙に逸れ、何処かへ飛んでいった。
「お戯れを」
「ちっ。お前は俺の未来を読んで攻撃してくるから不意打ちになんねえよ。うざってえたら、ありゃしねえ」
そう、この人はいきなり俺に攻撃をしようとしてきたのだ。最近はいつもこうだ。おかげでエスターさんの行動すら読まないといきなり斬撃が飛んでくる。
「普通の人は、いきなり斬撃を飛ばしてきませんよ」
「修行ってのは、そう言うもんだろうが。もう冬もだいぶ近づいてきた。このままじゃ凍死だ。少し大魔境を戻るぞ。メリー族の村近くに洞窟があっただろう。あそこで寒さを凌ぐ」
「了解です」
「久しぶりに会えるぞ、メロウにな」
「そうですね」
俺達は、来た道を戻っていった。
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