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一か月半後

 ああ……。周りに何もいないな。ここは、どこだ? 体中が痛い。立っている。座っている?

 俺は体中が返り血塗れになりながら地面に倒れ込んだ。その周辺にはおびただしいほどのギャングプテラの屍の山が落ちている。


 既に飛んでいるギャングプテラは一匹も居ない。

 意識がなくなりそうだ。魔力はすっかり底を尽きている。


「どれくらいやりあってたんだ?」


「二時間だ。やればできるじゃねえか。最後の方がいい動きだった」


 気付けば、すぐ横にエスターさんが立っていた。


「よお、スパルタ野郎。死んだらどうするつもりだったんだ?」


「死んだら、そこまでの奴だったってことだ。歴史上の英雄ってのは、ああいう修羅場を結果的に生き残っちまった奴等が呼ばれるのさ」


「そうかい……」


「今の気分はどうだ?」


「生まれ変わったような気分だ」


 俺の言葉を聞き、エスターさんは歯を見せて笑った。


「これからは毎日これだ。魔力はスキルを使い続けたり、限界まで魔力を使い切ることで伸びる。お前の魔力は既に多いが、まだ伸ばせるはずだ。死ぬ気でやれ」


「了解です、お師匠様」


 自分の戦い方が見えた気がした。特化すべきは威力と速さ。それ以外は全て捨てていい。ただ、この二つだけを研ぎ澄ませればいい。

 鍛えよう。時間はまだある。




 それから一ヶ月半が経過した。

 頬を撫でる風の冷たさが冬を感じさせる。俺は川岸で服を洗っていた。

 俺は背後の森へ振り向くと、矢を引き絞る。目線の先にはただ森の木々が揺れているだけだ。


付与矢(エンチャント)・【迅雷】」


 弦から放れた矢は流星のように綺麗な弧を描き飛んでいく。

 そして森から飛び出した瞬間の地獄鶏の頭部に突き刺さる。

 小さなうめき声と共に、体から力が抜けていき地面に倒れ込んだ。もう二度と動くことはない。


「うーん。今日は来客が多いねえ。呼んでないんだけど」


 俺はそう呟くと再び弓に矢を番え、何もいないはずの森へ矢を放つ。放たれた七つの矢は森へ飛んでいき顔を出した黒剛猿の眉間に寸分違わず突き刺さった。

 だが、まだ二十体ほどが森から顔を出す。

 俺はひたすら矢を引き、放つ。放った数だけ黒剛猿の死体が増えた。


 残りは五体。俺への距離は後四メートル。近寄れば殺れると思われてるのかね?

 左の個体は、俺の腹を狙った右ストレート。右の個体は、頭に組んだ両手の振り下ろし。

 俺は右ストレートを躱すと同時に、矢を敵の顎に当て、放つ。


 矢が顎から頭部を貫き、宙に舞う。

 組んだ両手での振り下ろしを、背後へのステップで躱すと、頭部を撃ち抜く。

 残り三体。

 後ろに二体。 右に一体。

 後ろの個体は右の大振り。からのラリアット。後ろのもう一体は首を狙った噛みつき。


 大振りを躱し、ジャンプでラリアットを躱す。そして一射。

 首を狙った噛みつきは一歩下がって開いた口に一射。

 右の個体は俺につかみかかろうと両手を広げ襲ってくる、と。

 俺はしゃがんで敵の両手を躱し、下から上へ、矢で頭を撃ち抜いた。鮮血が俺の服に降りそそいだ。


「汚れちゃったよ、もう……。また洗わなきゃ。その前にまだやることあるみたいだけど」


 俺は川の向かい側からこちらへ近づいてくる巨大なミスリル製の人形に目を向けた。

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