命がけ
翌日、俺はエスターさんに連れられ、再び森の中に居た。
一体何をするつもりなんだ?
「俺は、中途半端な修行じゃ短期間じゃ強くなれねえと思っている。お前のスキルじゃ尚更な。命をかける覚悟はあるか?」
エスターさんが真面目な顔で尋ねてきた。
「勿論」
「じゃあ、戦え」
エスターさんが指差す先にはギャングプテラの群れ。その数は百を余裕で超えるだろう。
「え? 百体以上いるんですけど……」
流石に数が多すぎる。二人ならともかく、ソロでは勝てないだろう。
「理論上は全ての行動を読んで躱し、頭を撃ち抜けば勝てるはずだ」
「冗談でしょう? 理論上はそうですが、この数は流石にさばけませんよ。餌になるのがせいぜ――」
「うるせえ、行ってこい!」
次の瞬間、エスターさんが俺の鎧を鷲掴みし、宙に放り投げる。
まじかよ!
俺は十メートル以上空を飛んだ後、地面に転がり落ちる。
顔を上げると周囲は餌を見つけた肉食獣の顔があった。
周囲は全てギャングプテラだった。視界が全て埋まるくらい。
とりあえず、一旦逃げて態勢を立て直す。
「シビル! 逃げるな! もし逃げたとしたら俺が次の相手だ。スキルってのは……死の境目で初めて覚醒するもんだ。ここで、一皮剥けろ。そうじゃなきゃ……お別れだ」
エスターさんはそう言って、剣を地面に突き刺す。
その目は全く冗談を言っているようには見えない。
『エスターさんは逃げたら俺を斬るつもり?』
『イエス』
本気だ。ここで俺が勝てなきゃ……殺すつもりだ。
本気で鍛えてくれ、とは言ったが……。
「クワアアアアア!」
思考中の今も、大量のギャングプテラがこちらを狙って飛んでくる。
見渡す限り敵。味方も居ない。
『右に避けるべき?』
『ノー』
『左に避けるべき?』
『ノー』
『前方に逃げるべき?』
『ノー』
『右斜め前に逃げるべき?』
『ノー』
『左斜め前に逃げるべき?』
『イエス』
俺は瞬時に左斜め前に走る。走った瞬間、埋まっていた視界の左斜めだけ僅かな隙間ができる。ここだ。
俺は包囲網を抜けながらも尋ね続ける。
『止まるべき?』
『ノー』
俺は走り続けながら、矢を構える。
『左前方の敵を狙うべき?』
『ノー』
『正面の敵を狙うべき?』
『ノー』
『右前方の敵を狙うべき?』
『ノー』
『そのまま一旦逃げるべき?』
『イエス』
畜生。今攻撃すると囲まれるわけね。駄目だ。もう囲まれている。
『後ろに逃げるべき?』
『ノー』
『左に逃げるべき?』
『ノー』
『右に逃げるべき?』
『ノー』
『前に逃げるべき?』
『ノー』
『逃げるより攻撃すべき?』
『イエス』
『前方の敵を狙うべき?』
『ノー』
『背後の敵を狙うべき?』
『イエス』
俺はすぐさま背後を向く。
背後には七体のギャングプテラ。
二体はこちらに既に突っ込んできている。
『突っ込んできているうち、左の敵を狙うべき?』
『イエス』
『右も狙うべき?』
『ノー』
『右に逃げるべき?』
『イエス』
俺はすぐさま右へ走る。
数秒後、俺が居た場所に十を超えるギャングプテラが群がっているのを見る。
もう一体射貫いていたら、間に合わなかったか……。
俺はメーティスに尋ねながら、綱渡りのように逃げまどう。
だが、数が多すぎる。
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