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族長

「どういうことだ!? 矢を構えているぞ。やはり奴等は侵入が目的だったのか?」


「人間無勢が俺達に勝てると思っているのか?」


 他の皆様までお怒りである。

 沈黙を破ったのは、エスターさんの手を叩く音だった。


「いや、すまないね。あまりうちのを挑発しないでくれるかな。これから族長に会いに行く客と揉めたくはないだろう?」


 エスターさんが鋭い眼光で立派な角の男を見る。その右手は剣の柄頭に添えられている。


「こんな雑魚、相手にする価値もない。行くぞ」


 男は俺の方を一瞬だけちらりと見ただけで、そのまま去っていった。


「すみません、エスターさん。ご迷惑をおかけしました」


 エスターさんは一瞬だけ頭を掻く。


「未来であいつが襲うのに気づいたんだろう? だが、周りは分からん。無駄にお前が悪者になっちまった。だが、それでいい。未来が読めることを活かした良い動きだった。不意打ちされない、ってのは大事なことだ」


 エスターさんの言葉に救われた。


「はえー、そういうことやったんか。さっぱり分からんかったわ! けど、シビルが抜いたってことはあの阿保がなんかしようとしとったんやろうな、とは思たで!」


 と明るく言う。


「信じて貰えて嬉しいです。いきましょうか」


 俺は彼等のことは忘れ、族長の元へ向かった。




 少し歩くと、今までで最も立派な二つの曲がり角を持つ男性に会う。

 三十代くらいだろうか。綺麗な長い銀髪がさらりと腰辺りまで伸びている。高く整った鼻筋に、きりっとした目をしている。

 そして、なにより強い。彼がおそらく族長だろう。


「族長。この度は大変ご迷惑をおかけしました」


 メロウが男性に頭を下げる。


「メロウ。あまりお父さんに心配をかけてはいけない。外は危険だからだ。特に君は外の世界への憧れが強いのは知っている。だが、規則は破ってはならない。分かるね?」


「はい……」


 メロウは顔を伏せ、黙って聞いている。静かだが、有無を言わせない迫力があった。

 族長はその後、こちらに顔を向ける。


「いや、お客様の前ですまないね。君達がメロウをここまで連れて来てくれたと聞いている。大変迷惑をかけた。ありがとう」


 と族長が頭を下げる。


「いえいえ。私が彼女を助けたくて助けただけなので、お気になさらず」


「全く恩にも着せずか。メロウ、良い人に助けてもらったな。メリー族を代表して礼を言う。人族にしては、後ろの方はかなり強いな」


 族長はエスターさんを見ながら言う。


「どうも。だが、ここではたいして役に立たねえぜ。やはり人間には大魔境はまだ早かったようだな」


「そうだろうな。私も実力には自信があったが……ここでは勝てない魔物ばかりだ。それでもここと付き合っていくしかない」


 と僅かにほほ笑みながら答える。その後、こちらを見ながら真面目な顔になる。


「失礼かもしれないが……少年、君はまだ大魔境で戦うにはいささか早いように思える。何か事情があってきたのだろうが、気をつけるといい」


 こちらを心配しての一言のようだ。


「ありがとうございます。必ず……強くなりますので」


「そうか。失礼したな。目的を果たせると良いな。何かあったら手伝おう。いつでも言ってくれ」


 族長は思いのほか良い人で、和やかに終了した。

 一泊していくか、という話になったが、少しでも急ぎたいエスターさんの意向でその日のうちに出ることになった。


「行ってまうんか……。二人とも、気をつけや。テトラマンモスみたいな化物はそうはおらんと思うけど、やっぱりここは危険やから」


 門の前で、メロウが心配そうに言う。


「心配してくれてありがとよ。目的のアルデド麦を手に入れたらすぐに戻って来るから大丈夫だ。帰りに寄れたら、寄るから」


「私もなんとか、お父さんを説得してこの村を出るから! 期待しててや!」


「応!」


 メロウと別れ、俺達は再びアルデド麦を探しに奥地に進む。

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