行儀が悪いな
「だが、青年。君は……魔力は多いが強そうには見えないな。魔法使いかい?」
「いえ、全く使えません。軍師です。最近は専ら弓師ですが」
俺の言葉を聞いて、首を傾げる。
「弓師か。確かにいい弓を持っている。そうか、ここは大変危険な場所だ。気をつけるといい。何かあったら力になろう」
「ありがとうございます」
ジルさんは怖いが良い人らしい。
「族長も久しぶりのお客さんに会いたいと言っていた。メロウを案内につけるから、顔だけでも見せてあげて貰えないだろうか」
「大丈夫ですよ」
メロウ父がそう言ってしばらくするとメロウがやってきた。
「案内するわ……行きたないけど」
「頼む」
歩いていると、こちらを見てひそひそ話をする者が多い。そして上の年代からはどこか憎悪に似た目線を感じられる。
「あれが人間か……初めて見た」
「一人は随分弱そうだぞ。よくここまでこれたな」
「なぜ、人間がこんなところに……」
「深層までは行けないだろうな。貧弱すぎる。きっと後ろの男に護衛してもらったんだろう」
聞こえてんぞ、お前ら。
「すまん、シビル。戦闘能力に自負があるメリー族は弱い人を見下しがちなんや。失礼やろ、お前ら!」
メロウの大声を聞き、露骨に目を逸らし何処かへ消えていく。
だが、突然十五、六くらいの少年三人に囲まれた。完全にこちらを馬鹿にした顔だ。
「変わり者のお前が連れてきたのは誰かと思ったら、こんな弱そうな人間かよ。こんな雑魚に守られるなんて、本当にお前は弱いな」
三人の中で最も角が立派な男が嘲るように言う。
「なんや、ゲイル。私は弱いかもしれんけど、この人はグランパイソンや黒剛猿も倒してんで」
「そりゃあ、幼体だったんだろう。このような貧弱そうな男じゃそれが精々だ」
「違いねえ! メリー族の子供にもやられそうだぜ、こいつはよお!」
隣に居た、男が馬鹿にしたように笑う。
「そこの馬鹿なメロウなら騙せたかもしれねえけどよ。俺達は騙せねえぜ? お前はギャングプテラにすら殺されそうだ」
まあ、元々オークすら倒せない俺だからな。ランドール様々である。
気にしても仕方あるまい。
「なんだ? びびって言葉も出ないのか?」
「話それだけならもう行っていいか?」
こちらが大人になってやろう。俺は切れることもなく、冷静に対応した。
だが、その態度が立派な角の男の癇に障ったらしい。苛立ちからか、男の顔が歪んだ。
『中心の男はこちらに敵意を向けている?』
『イエス』
『攻撃予定あり?』
『イエス』
『五秒以内?』
『ノー』
『十秒以内?』
『イエス』
『念動系の攻撃?』
『イエス』
俺は無言で矢を生み出すと、引き絞り男へ向ける。
「随分、行儀が悪いな」
男は自分の動きが読まれたことに動揺を隠せない。だが、他の二人は違う。
「てめえ、いきなりここで武器を抜いていいと思っているのか!」
「勝てると思ってんのか、貧弱が!」
二人は手をこちらに翳してきた。未来が読めるのを2人からすると、いきなりこちらがきれて武器を抜いたと思ったのだろう。
他の者達も騒ぎ始めた。完全にこちらが悪者である。ミスったか。
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