プレゼント
「ガウウッ! ガウッ!」
シロの頭を叩く衝撃で目を覚ます。寝ぼけたまま頭を上げる。
「シロ、待ちきれないのか。いいよ。行こうか」
俺はエスターさんとメロウを起こすと、朝食を軽く食べる。
「こっちだな」
俺達は朝食後早速、シロの親の居る群れの元へ向かった。
歩き始めてから数時間。群れはもう目前だ。
「ガウウウウー!」
遂にシロが我慢できずに走り出した。
それをメロウは笑ってみていたが、少し寂しそうにも見えた。
群れが見える。
それは兎耳をつけた白熊の群れだった。シロほど可愛くないな。だが、かなり強そうだ。だって熊だもんなあ。
「ガウー!」
シロは一匹の大きな熊兎に抱き着いた。きっと父親なんだろう。腹に大きな傷がついている。歴戦の猛者感がある。
父熊はシロを撫でて抱きしめた後、こちらを見つめている。
少し怖い。そして群れの数もかなり多い。五十以上いる。
敵じゃないよ~、と両手を上げてみる。
父熊は無言でどこかへ消えてしまった。
帰れ、ってことだろうか。メーティスに確認するも、戦闘はなさそうだ。
「消えてもたなあ……」
メロウが寂しそうに呟く。
すると、父熊が戻ってきた。なんかすごい立派な鎧を持って。
父熊は無言でこれを俺達の目の前に置いた。
「ガウッ!」
「くれるってことだろうか……」
龍の鱗と、獣の皮を組み合わせて作られた鎧である。長い年月が経っているが、まるで傷んでいない。なぜ熊兎がこんなものを?
「二十年前の探索部隊の者の装備かもしれねえな。火龍の鱗と、ミスリルタイガーの皮が使われてる。相当高い。並の冒険者じゃもてねえ。覚醒者がS級魔物と戦う時の装備だ」
エスターさんが感心しながら言う。どうやら素晴らしい物らしい。
「これは、拾ったの?」
俺の言葉に、父熊が頷く。
「シビル、貰っとけ。お前の装備はここじゃ明らかに弱すぎる。これがあれば、一撃くらいは耐えれるかもしれねえ」
「私も要らんわー。せっかくここまで手伝ってくれたんやし、それくらい役得があってもええんちゃう?」
「二人がそう言うなら……」
俺は二人に促され、鎧を纏う。
軽い。鱗と皮とはいえ殆ど重みがない。おそらく魔法具なのだろう。
これは掘り出し物だ。
「ありがとう」
「ガウッ!」
父熊が返事をする。意外と良い熊なのかもしれない。
「さよならやな、シロ」
「ガウウ……」
メロウがシロの頭を撫でている。シロの寂しそうな声を上げている。メロウは格好良く別れを告げていた。
中々男らしい。
「嫌やー! 連れて帰るー!」
突然、メロウが泣きだしながらシロを抱きしめ始めた。
父熊も先ほどの迫力ある様子とは裏腹に動揺が見て取れる。
魔物さえも動揺させるとは、メロウおそるべし。
「メロウ、帰るぞ」
「私が育てるんやー! 立派な子に私が育てるから!」
ママになるまでが速すぎる。
「せっかく頑張ってここまで送ってあげたんだから。シロもお父さんと一緒に暮らしたいよ。また会えばいいじゃないか」
「うう……」
少しごねたが、最後にはシロを放す。
「また、会おな!」
メロウは両手を痛めんばかりに振り別れを惜しんでいた。
こうして無事シロは家族の元に戻ることができた。
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