早く帰ってほしい
だが、俺は既にこの一撃も、次の一撃も読んでいた。
俺は空靴を使って空中へ跳び、回避する。
「エスターさん、もう一発来ます!」
俺はすぐさま後ろに居るエスターさんに声をかける。
そう、鼻により振り回しは二本。
もう一本の鼻が、こちらに襲い掛かる。
俺は空中を蹴り、更に上に舞い上がる。
だが、エスターさんはそうはいかない。
「ち、畜生が……! 舐めるんじゃねえ!」
エスターさんは思い切り剣に魔力を纏わせると水平に迫りくる鼻に、剣を振り下ろす。
魔力がぶつかり合う、鈍い音が響く。完全に鼻の勢いが止まり、そして剣の勢いも止まった。
「だああ!」
その一合のぶつかり合いはエスターさんに軍配が上がった。エスターさんはそのまま鼻の軌道を下にずらすことに成功した。
「流石!」
「二度としねえぞ……」
エスターさんは疲れた顔をしつつも、走り続ける。
怒れるテトラマンモスは俺達を叩き潰そうと怒りの形相で走って来る。
「エスターさん、こっちです!」
このままでは長くは逃げられない。そう感じた俺が向かったのは、山にある穴だった。
穴の広さは直径五メートル程。テトラマンモスは入ることはとてもできない。
「あそこに飛び込みます!」
俺達はテトラマンモスに追われながらも、穴に飛び込んだ。
「ブオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
テトラマンモスは凄まじい怒号を上げながらも、穴の先端を破壊しながら俺達を襲おうと頑張っている。
ドリグランがよほど効いたのか、決して鼻は中に入れて来ない。
とっとも帰れ、ってんだ。もう一発食らいてえのか。
テトラマンモスが本気を出したら、この山すら潰せそうで怖い。早く帰って欲しい。
テトラマンモスはしばらく粘って鼻を穴の外に打ち付けていたものの、最後は帰っていった。
「た、助かったんか……?」
メロウが怯えたような声色で言う。
『テトラマンモスは諦めた?』
『イエス』
「ああ。助かった。生き残ったんだ、俺達は」
俺は疲れから、硬い地面に倒れ込む。
「良かった……死ぬかと思った。ほんまに……ありがとう」
メロウはそう言って、俺に抱き着く。
「お、おい、メロウ⁉」
「怖かった……」
メロウの声は僅かに震えていた。命がけの状況が、大魔境では多すぎるのだ。
「……そうだな。もう夜になる。明日には会える。ゆっくり休め」
「うん」
やけにしおらしいメロウの背中を優しくさすった後、俺達はすぐ眠りに着いた。
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