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熊兔

「俺はシビル。ローデル帝国から来た。傷は大丈夫か? ポーションを使うと良い」


 俺は腹部の治療のためにポーションを手渡す。グランパイソンという魔物の攻撃を受けたようだが、骨は折れてなさそうだ。

 少女はポーションで治療した後、腰をあげる。その伺うような目から警戒していることが分かる。


「ローデル帝国……南部からきたんか? ということは、人間か?」


 少女は驚きながら、こちらを見つめている。やっぱり人間が珍しいのか。普通こんなところ、来ないからな。


「ああ」


「初めて見たわ! 聞いてた通り、私らと姿は似てるんやなー。角は無いけど。私はメロウや! シビル、助けてくれてありがとうな!」


 メロウは笑顔でそう言って、頭を下げる。

 年は十五、六くらいだろうか。大きな羊の角のような曲がりくねった角が二本。紫色の長髪が少しウエーブがかかって腰のあたりまで伸びている。

 どこかあどけない幼く小さな顔に、小さく整った唇が見えた。幼そうな顔とは裏腹に、胸部にはしっかりとしたふくらみがあった。


「偶然通りかかっただけだ。気にしなくてもいい。それにしてもどうして大魔境なんかに?」


「どうしても何も、生まれてからずっと私達メリー族はここに棲んどるよ。ここしか知らへん」


 ここに住んでいるのか……。よく今まで生き残れてたな、この種族。かなりの戦闘民族に違いない。


「メリー族……」


 エスターさんがメロウの種族名を聞き、ぼそっと呟く。


「凄いな。実はアルデド麦っていう穀物を探してここまで来たんだ。聞いたこと無い? 麦なんだけど、金色のようにも見えるらしいんだ」


 それを聞いたメロウは大きく首を傾げる。


「知らんなー。そもそも私、実はあまり大魔境のこと知らんのよ。うちの種族、十六までは村の外出たらあかんし」


「そうなのか。じゃあ、十六になったばかりなのか」


 その言葉を聞いたメロウはさっと目を逸らす。


「そ、そうや……」


 目は口程に物を言うとはこのことだ。こいつ、村を脱走したに違いない。


「本当に?」


「はー? どう見ても十六やん! この大人なボディーみて分からへんの!?」


 分かるか。顔だけ見ると、十五にすら見えんぞ。


「まあいい。早く帰った方がいい。大魔境が危険なのは知ってるだろう」


「シビルも強そうに見えへんで。国に帰った方がいいんちゃう?」


 その攻撃は俺に効く。来たくて来たわけではないが、そうも言えない。


「俺のことはいい。村へ帰れ。ここは一人で歩くような場所じゃない」


 それを聞いたメロウが、眉を顰めた。


「そんなこと、よそもんに言われんでも分かっとる。私は帰らん。行くところがあるんや」


 メロウはそう言うと、兎のような生き物を連れてどこかへ去ろうとする。


「どこへ行くつもりだ?」


「この子の親を探しに行く。この子、群れからはぐれてしまったみたいなんや。このままにしておけへん」


 この可愛らしい生き物は熊兎というらしい。現状は二足歩行の兎にしか見えないが、大人になると熊顔負けのガタイになるらしい。


「群れの場所は分かっているのか?」


「……知っとる」


『メロウは群れの場所を知っている?』

『ノー』


 知らないんかい! おそらくメロウはそこまで強くない。適当に群れを探してさ迷った場合、間違いなく死ぬだろう。


「お前、群れの場所知らないだろう。無謀だ」


「危険だからって……この子見捨てるような人間になる気はない。例え、死んだとしてもや」


 メロウははっきりとそう言った。


「いや、見捨てろなんて言うつもりはない。俺も手伝おう。死なれちゃ寝覚めが悪い」


 特に善人にはな。


「お前……聞いてないぞ」


 エスターさんが難色を示す。

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