魔境の少女
大魔境に朝の日差しが差し込み始める。
シビルとは少し離れた場所を一人の少女が走っていた。息は上がっており、顔にはびっしりと玉のような汗が浮かんでいる。
少女は両手で一匹の白い生物を抱いていた。兎のような、白い生き物だ。
「私が……私が必ず連れてったるからな……」
少女はそう呟きながら背後を見る。
背後からは巨大な蛇の魔物グランパイソンが獲物を見る目で、少女と兎を見つめ迫ってきている。
直径数十メートルはある巨大蛇である。鋼鉄のような鱗に覆われており、ダイヤ型の斑紋が全身に刻まれている。
「シュー……」
と音を立て、その目の色が変わる。グランパイソンはその巨体では考えられないような俊敏な動きで、少女に飛び掛かる。
少女は咄嗟に右手に回避し、その牙を躱す。グランパイソンの牙は、直径二メートルは優に超える大木を砕く。
「念動波!」
少女が右手を翳すと、目に見えぬ衝撃波が放たれる。それを受けたグランパイソンは大きく仰け反る。
「あかん……この程度じゃ倒せへん……」
少女は勝てないと判断したのか、再び背を抜けて逃亡する。
グランパイソンは完全に餌と認識しているのか、その背を追う。
少女が大木の間を通る瞬間を狙い、再度巨大な口を開け、襲い掛かった。
逃げ場を失った少女は上空に大きく跳んだ。なんとかその一撃を回避できた、と彼女はそう思った。
だが、上空に居た少女目掛けて、グランパイソンの槍のように研ぎ覚まされた尻尾が一直線に突きを放った。
(さっきの噛みつきは誘いか……! ミスったわ……)
少女はせめてと、兎を両手で大きく上げ尻尾の攻撃に晒されないように守った。
少女の腹部に重い一撃が突き刺さる。
「ぐっ!」
少女はうめき声を上げると、そのまま数メートル吹き飛ばされ、木にぶつかった。
「ガウッ、ガウッ!」
兎が心配そうに少女に声をかける。
「グランパイソンがこっち来てる。もう逃げな、シロ」
少女はかすれた声で、兎を撫でる。
グランパイソンは大きく顔を上げると、獲物を捕食するためにその口を開いた。
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!
評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!





