ヒモか
初めてあったS級はまさしく天災という名に相応しいものだった。これが帝国に来たらどうやって討伐するのか見当もつかない。
俺達はメーティスで絶対にもう亀が暴れないと、いう保証を貰ってから亀の背中から地面に移り、ゆっくりとその場から逃げ去った。
まだ心臓がビートを刻んでいる。
「S級っていうのは、凄いですねえ」
「S級の魔物ってのは、A級冒険者で倒せない魔物は皆そのくくりに入るんだよ。だからS級魔物ってのは強さがぴんきりだ。俺が倒せるS級も勿論いる。だが、あれは……どう殺したらいいのか見当もつかないぜ」
あまりにもでかすぎた。あのレベルがポンポン出るのなら、アルデド麦まで辿り着けるとは思えない。
アルデド麦まではまだまだ遠い。
太陽が家に帰り、闇が主役となる頃。
俺は森の中疲れ切った顔で、焚火を見つめていた。今日のコックはエスターである。焚火の先では、鍋がぐつぐつと音を立てる。
「ほら、食え。俺の飯は部下にも評判だ」
そう言って、エスターがお椀に鍋を入れてくれた。
なんか、変な臭いがするような。俺は疑問を持ちながらも、 口に含む。
「まずっ!」
俺は口から全てを吹き出す。
『今食べた物は毒?』
『ノー』
まじで毒を盛られたかと思った。
「てめえ、俺がせっかく作ってやったのに!」
「あんた、逆に何を入れればここまで不味くなるんだ!」
俺の剣幕に、たじろぐエスター。恐る恐る自分の料理を口に含む。食べた瞬間、顔が歪む。
「うーん……独特な味だな……」
言葉以上に、歪んだ顔がその不味さを雄弁に物語っていた。
「じゃあ、全部食べて下さい。こんな料理食べさせるなんて、パワハラですよ! 二度と部下に食わさないでくださいね」
「そうするぜ。俺はどうやら風通しの悪い職場を作っていたらしい。まあ、俺は炊事洗濯全くしたことねえからな」
エスターは開き直る。話を聞くに、全く生活力がないらしい。剣を振るうしか能がないタイプだ。
結局、全て俺が作り直した。エスターが作った毒物は自然に還ってもらった。
「いやあ、シビルが料理を覚えてくれていて助かったぜ。俺はお前が居ないと生きていけねえよ~」
「これからは俺が作ります」
あんな料理食べていたら、回復どころか体力減ってしまうよ。後、ヒモみたいなこと言うな。このおっさん、剣帝にならなかったらヒモになってそうなオーラがある。
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!
評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!





