おもてなし
走り始めてから既に一時間以上が経過しただろうか。全身が悲鳴をあげている。空靴は凄い。身体能力がゴミの俺が、覚醒者の走りについて行けるのだから。だが、代償は大きく、魔力を大量に消耗した。
『地獄鶏は周囲一キロメートル以内に居る?』
『ノー』
俺はメーティスの返事を聞いた後、地面に倒れ込んだ。
「かなり幸先のいいスタートになっちまったな」
エスターも流石に少し汗をかいていた。どこもかしこも木々に覆われているため、周囲の様子も分からない。
俺は地面に落ちているクルミをマジックバッグに収納する。
「お前、また何か採取してんのか。余裕だな」
エスターが呆れたように言う。
「大魔境産の物は貴重ですし、きっと何かの役に立ちますよ」
このクルミはどうやら割ると爆音がなる、音胡桃というらしい。他にも猛毒の花や、やたら臭い木の実など色々既に拾っている。
何が価値があるかは、メーティスさんに聞けば一発である。価値のある物は皆、バッグに収納している。
『周囲百メートル以内に魔物は居る?』
『イエス』
俺はメーティスの回答に溜息を吐く。ゆっくり休むこともできないらしい。
体を起こすと、周囲を見渡すと何か風景に違和感を感じた。
「ん? どうした?」
「何か違和感が……エスターさん、俺疲れてるんですかね。なんか枝がこちらに向かって伸びている気が……」
俺はすぐ近くの木を指さす。その枝は明らかな急成長を遂げながらこちらに伸びてきている。
次の瞬間、大量の枝と、蔦が俺を目掛けて襲い掛かってきた。
こいつも魔物かよ!
俺は、木の枝を矢で撃ち抜くもまったく痛がる気配がない。
「ちっ、ゴーストツリーか! 逃げるぞ!」
「またですか!」
俺は疲れた体を無理やり動かし、その場から逃げ出した。
どうやらあそこは木に擬態して生物を襲うゴーストツリーの巣のようだった。あいつらは動かないため、比較的楽に逃げることができた。
俺は腰を下ろすと、革袋に入れた水を飲む。
周囲に魔物の気配は感じない。が、何か違和感を感じる。凄い危険と隣り合わせで生きているような。鳥肌がたっているのだ。
もうメーティスに確認したくも無かったが、一応確認する。
『周囲百メートル以内に魔物は居る?』
『イエス』
畜生め。俺とエスターは、草に隠れるように移動する。
「周囲百メートル以内に魔物がいます」
「またかよ……」
『A級以上?』
『イエス』
ここの森はどうなっているんだ。もう帰りたい。というか生きて帰れる気がしない。
『S級以上?』
『イエス』
まだ初日だぞ……。この森のもてなしは酷すぎる。
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