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いざ、大魔境へ

「じゃあ、明後日ローデルと大魔境の国境沿いに集合だ。準備や挨拶しとけよ。遺書も書いておいた方がいいぜ。じゃあな」


 昨日まで命がけで戦争をしていたハルカ共和国総大将エスターは、そう言うと、去っていった。

 遺書なんて縁起でもねえこといいやがって、あのおっさん。書く相手もいねえよ。


 とりあえず、上官であるリズリーさんに挨拶に向かう。

 リズリーさんは、完全にこれから死地に赴く兵士を見る顔である。


「シビル、なんというか……。いや、うん。君は、頑張ったよ。素晴らしい活躍だった。褒賞も期待していい。だから……生き延びろ。なんとかな」


 リズリーさんは最後大真面目な顔でそう言った。


「勿論、更に結果残してきますよ」


「なんだ、まだ冗談を言う余裕はあるんだな。いくら剣帝と一緒とはいえ……もうローデルでは何十年も、大魔境に軍は出していない。なぜかは勿論知っているな?」


「皆、死ぬからでしょう?」


「そうだ。今のところ、ローデル帝国の生還率はゼロ%だ。悲しいがな。南西の亜人連合国の者が、帰還したという噂話は聞いたことがあるから、生還自体は、不可能ではないはずだ。お前は、まだ俺の部下だ。必ず帰って来い。もう帰る隊もあるんだろう?」


 リズリーさんが言う。


「はい。隊長が居なくなる訳にはいきませんから。しばし、お休みを頂きます。必ずや、戻って参ります!」


 俺は敬礼する。


「良い返事だ。君のスキルは生存率も上げるだろう。地獄のような場所だが、剣帝も居る。精々勉強して来い。後、これを上げよう。役に立つかは分からんがな」


 リズリーさんは一冊の本を手渡す。大魔境の生態について、と書かれている。パラパラと中身を見ると、大魔境にいる魔物について書かれているらしい。


「ありがとうございます」


俺は頭を下げ礼を言った後、リズリーさんの天幕から出る。その後、シビル隊の皆の元へ向かった。

 シビル隊の皆の顔は曇っている。完全に俺が戦死したテンションだ。


「シビル、大魔境に行くって本当なの!?」


 ダイヤが真っ青な顔で叫ぶ。


「……ああ」


「大魔境は駄目だ! あんなところ、人間の行くところじゃないよ! 今、皆で抗議しようと話してたんだ! こんなの自殺みたいなもんだ」


 シビルが唇を震わせながら言う。


「私の父にも相談してみましょうか?」


 ルイズも心配そうにこちらを見ている。ルイズの父はそう言えば、子爵だったか。


「いや、これはもう国と国で正式に決まってしまったことだ。たとえ、子爵の力でも難しいだろう」


「けど、あまりにも……無謀ですよ! 二十年前、各国が精鋭、皆S級冒険者並と力を持つ者達を出し合い、十二人で大魔境に向かいました。誰もが、大魔境を踏破すると思っていた精鋭達が、全滅しました。 剣帝、一人ではとても……」


 これは有名な話だ。アルテミア、ローデル、ハルカの三国合同で十二人のS級覚醒者を出し、大魔境に向かったが、誰一人として帰ってくることはできなかったのだ。それ以降、どこの国も大魔境には触れなかったのだ。国境付近を強化したのみ。


「大丈夫、俺のスキルは生存に強い。危険は全て躱して、ちょっと穀物を手に入れてすぐ戻って来る。だから、それまではシャロン、君にシビル隊を任せたい。頼めるか?」


 シャロンは話に参加せずにただこちらを見つめていた。


「ああ。私が、留守の間、しっかりとシビル隊を守ろう」


「シャロンなら、安心して任せられる。今回、俺達はまだ力不足だった。俺も、力をつけて帰ってくる。だから皆も強くなっててくれ」


 俺の言葉を聞き、皆暗い顔が少しずつ明るくなる。俺が諦めていないと、気付いたからだ。


「任せて下さい!」


「俺達も強くなって、待ってますんで!」


 部下達が元気に叫ぶ。


「任せろ、必ず強くなって待っててやる。だから、お前も死ぬなよ」


 シャロンが言う。


「当たり前だ。なんで大魔境なんてところで最後を迎えないといけないんだ。絶対御免だね」


 俺は笑って皆と別れ、大魔境との国境付近に向かった。

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