追手
その頃、白虎隊は森の中に潜み、護送される王子を待っていた。
森は彼等にとって庭のような物。木々に潜み、完全に闇と同化していた。
ライナスの鋭い目が、護送される王子を捉えた。王子は千を優に超える大人数に囲まれ厳重に護送されていた。
白虎隊は、敵の護送隊がテリトリーに入るのを静かになった。そして、完全にその牙の範囲に入った瞬間、暗殺者のように闇に紛れ、その爪で共和国兵を斬り裂いた。
音も無く、静かに共和国兵が倒れていく。
「敵兵か!? なぜ護送ルートがばれている!」
悲鳴を上げる共和国兵。だが、白虎隊の目は王子をしっかりととらえていた。
周囲の敵を蹴散らし、王子を回収する。
「殿下、お静かに。すぐさま闇に紛れ、脱出致します」
ライナスの言葉に、王子は無言で頷いた。白虎隊を見たことは無かったが、帝国軍服を着ていたからだ。
「王子を逃がすな! 追え!」
共和国兵は松明に火をつけ、周囲を見渡す。
「あそこだ!」
白虎隊は、獣人の脚力を活かし、一瞬で戦場から脱出した。
「族長、追って来てますぜ?」
「流石に数が多すぎる。それにこれはスピード勝負だ。それに、シビル様も援護に来てくださる。俺達は命令通りの道で戻るぞ」
「「「はっ!」」」
ライナスは王子を担ぎながら、必死で逃げた。
だが、敵騎兵も早く、距離を次第に埋められ、騎兵に囲まれる。
「戦うしか……!」
「囲まれた! 私もこれでも王子の一人。最後は華々しく散ってやる!」
王子も、剣を向く。
一触即発の最中、空を斬る音が戦場に僅かに響く。静かな音と共に、敵兵の眉間に矢が刺さる。
敵兵の背後から、シビル隊が襲い掛かる。
「ライナス、こっちだ!」
その声の主は、シビルだった。
「ライナス、待たせたな!」
俺はライナスと、傍にいる王子を見て安堵する。
なんとか間に合ったようだ。
「シビル隊、包囲を崩せ! 白虎隊、こっちだ!」
「「「はっ!」」」
白虎隊を囲っていた敵兵は、背後から襲い掛かるシビル隊に完全に混乱していた。
騎兵を速やかに始末し、すぐに逃亡を再開する。
「殿下、お待たせしました。パンクハット軍軍師兼小隊長のシビルです」
「天幕に居た男だろう、覚えている。今回は……助かった。なんとか逃げれそうだな」
王子は俺の後ろに乗りながら言う。
だが、俺はまだ全く安心していない。
『追手が来ている?』
『イエス』
『追手は不死鳥?』
『ノー』
メーティスで予め、予想はしていた。だが、聞きたくはないことを尋ねる。
『追手は、剣帝?』
『イエス』
剣帝本人がこちらに向かって来ていた。
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