デート
あの大儲けから一週間、それ以降はいつも通りの日常が待っていた。今までのように隣町から商品を買い、露店で売っている。最近はネオンも少しずつ目利きができるようになってきて、俺の出番がいつかなくなるんじゃないかと、怯えている。
今日は一人で隣町ヘニングで商品の仕入れにやってきた。すると、綺麗な白いグローブが販売されているのが目に入った。見た目からして高そうな品である。お値段も七銀貨。
『この商品は倍以上の価値がある?』
『イエス』
どうやら掘り出し物のようだ。だが、これを見た瞬間浮かんだのは、イヴの顔である。以前見たイヴの手は美しい白い指が傷だらけであった。以前助けてもらった上に、商品まで購入してもらっているのに、まだ何も返せていない。
結局俺はイヴへのお礼としてそのグローブを購入した。後でメーティスさんに尋ねた所、どうやら握る武器が僅かに軽くなる効果が付与されているようだ。威力が下がるのか心配したが、それでいて攻撃の重さ自体は変わらないらしい。
露店が休みの日、プレゼントを渡すためイヴを探す。すると、通りを見回っているイヴを発見する。俺を見つけると、手を振って駆け寄ってきた。
「おはよう、シビル。この間露店に行ったけど商品が増えていて良かった! 日に日に減っていく商品を見てると不安だったから安心したよー」
と無邪気に心配してくれる。
「これでもやり手の商人ですから」
と返す。実際俺の商人としてのスキルは微妙の一言だが、まあそれはいいだろう。俺は手に持っていたグローブを入れた袋を差し出す。
「これ、この間助けてくれたお礼。今まで何もできてなかったから、是非貰って欲しい」
「えっ!? 嬉しい! ありがとう!」
うれしそうな顔で素直に受け取ってくれた。中からグローブを取り出すと、にっこりと笑う。
「綺麗なグローブね! うん、ぴったり!」
グローブを身に着け、レイピアを構える。そして、流れるような美しい所作で、突きを放つ。
「武器を軽くする効果が付加されている。けど一撃が軽くなった感じはしない。高かったんじゃない?」
一瞬で効果が分かったのか。
「いや、偶然掘り出し物を見つけたんだ! だから遠慮なんてしないで! イヴには助けられてばかりだから受け取って欲しい」
「そう? ありがとう! とっても嬉しい」
その笑顔だけで、プレゼントの元が取れたと言えるだろう。それほど可憐な笑顔だった。
「けど、貰いっぱなしは……。そうだ。今日は昼までなの! その後、おすすめの店でご馳走するね!」
「いや、そんな。これはお礼だから気にしないで……」
「私との食事は嫌?」
と悲しそうな顔で言われる。これは断れない。
「嬉しいよ。ありがとう」
「良かった! じゃあ、昼過ぎに、鐘の下で待ち合わせね!」
なんとプレゼントを贈ったら、美人とのお出かけが決まっちまったんだ。女の子と出かけるなんて初めてだから何をすればいいかなんてわからん。ネオンとは仕事仲間だしなあ。プレゼントさっきしたばかりだし……うーん。なるようになるか。
俺は思考を放棄し、お昼を待った。
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