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誘拐

 俺の居る右翼の戦いも過熱していた。

 だが、右翼の戦いは俺達、ローデル側に軍配が上がっていた。


 その大きな理由はやはり一万近い軍の指揮をウィルタイガーがしたことがなかったことだろう。

 そしてもう一つの理由は、他の大隊長達との連携だ。


 半分ほどの隊長はウィルタイガーの指示に従っていたが、他の者は指示に素直に従っていなかった。まだ若いウィルタイガーに反感を持っているのだろう。

 馬鹿だなあ。


 だけど、これは狩り時と言える。俺は指揮に従わず独自行動をする大隊長を中心に狩りまくった。

 昨日も、大隊長を何人か仕留めていたせいか、上の者が減っている。烏合の衆のできあがりである。

 上手く回らない自軍にウィルタイガーは苛立ちが隠せていない様子。


「駄目だ。これなら爆虎隊だけで戦った方が楽だ! 大隊長ももう数人しか残っていない。数千人既にやられている……」


「ウィルさん、ハビン大隊長が討ち死にです」


「今見てた! くそっ! 大人数の指揮がこれほど大変だとは……。ハビン隊のところは爆虎隊を援軍に出してなんとか間に合わせろ」


「それが、既に爆虎隊は全て援軍に出しておりまして……」


 部下が目を逸らしながら伝える。


「……ハビン隊に居た中隊長に、指揮権を移譲しろ。後は任せた」


 ウィルタイガーは遠くを見ながら呟いた。




「効いてますねえ。指揮官が居ないことが効いてますねえ」


 俺はニヤニヤしながら、ウィルタイガーの様子を見る。こちらはフレイさん、シャロン、イヴ、と個人で優秀な者があちらより多かった。

 それが勝因だろう。

 数より、質か。


 中央軍の怪物同士の戦いを見ていると、本当にそう思う。

 日も暮れ始めた。今日の戦いも終わりが近い。

 俺は次を見据え始めていた。



 この戦いの終わりは、不死鳥の逃亡からいっきに動いた。


「これ以上は……あばよ。根暗女」


 ヨハンは魔力が尽き始めたのか、突如逃亡を始めた。


「逃がすと思っているのか、ゴミクズが」


 影の巨人がヨハンを叩き潰した、かに見えた。それはヨハンが作った、鳥を模った炎であった。本物は火炎に混じり、既に飛翔していた。


「今日の所はおさらばだ。覚醒者二人連続は流石に厳しい」


 そういって、凄まじい速度で戦場から離脱する。


「奴め……部下を置いて逃亡しやがった」


 ポスカは苛立ちを隠せなかった。だが、ヨハンに部下を思いやる気持ちなどみじんもない。あるのは、殺す喜びと、我が身恋しさだけである。

 ポスカはすぐに切り替える。その目の見据える先は、剣帝である。


「あちゃー、ヨハン逃げちゃったか。これは厳しいねえ。今日はここまでかな?」


「逃がすとでも?」


「君も連戦で魔力が無くなってきてるだろう? 技のキレが落ちている。共和国軍、全軍退け!」


「「「全軍、撤退~!」」」


 エスターは大声で命令を下すと、共和国軍は速やかに撤退し始める。


「逃げる敵を削りなさい! 今が狩場よ!」


「「「応!」」」 


 アンジュはこの隙を逃さず、少しでも敵兵を狙い数を減らす。ポスカもアンジュの言葉通り、敵兵の数を減らすため戦場で暴れ回った。



 こうして二日目の戦いも終わりを迎えた。


「結局、死傷者は今日も同じくらいかしら? 右翼が予想以上に頑張ってくれたおかげね」


 アンジュが戦が終わった後の平野を見ながら呟く。


「すみません。私が素早く戦場に戻れなかったばっかりに」


「いいのよ。おかげで敵の奥の手は潰せたんだから。負傷者が同数なら、敵も諦めざるを得ないはずよ。剣帝も馬鹿じゃない」


 アンジュはこの戦いは魔術師団が潰れた時点で既に終わったと見ていた。

 だが、それ故にあっさりと撤退をした剣帝に違和感も感じていた。


「まあ、考えても仕方ないわね。戻りましょうか、今日は流石に疲れたわ」


 アンジュはそう言って、天幕に戻る。


「魔術師団も潰した。もうこちらの勝利でしょう!」


 幹部達が集まる天幕内は勝利を確信していた。

 そこに顔を真っ青にした兵士が登場する。


「ご、ご報告致します! 第二王子が……攫われました!」


 この戦いはまだ終わっていなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 第二王子 いましたねそんな人 超人ばかりの戦場で忘れていました/(^o^)\
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