不死鳥
「シビル隊、全員でフレイさんを援護しろ!」
フレイさんの負担を減らすため、左右の敵を斬り進む。
俺も弓を使い、敵を減らす。フレイさんの刃がどんどん敵陣の奥まで入り込む。
「おい! こ、こっちに迫って来るあいつらを止めろ! 儂が討たれれば、この左翼は終わりじゃ! 」
敵の大将は、変な髭をしたおっさんであった。怯えながら部下に叫ぶ。
そして最後には部下を置いて、逃げ出した。
「逃がさん」
俺は弓を引き絞り、敵将の乗っている馬を射貫く。
「ヒヒイイイイン!」
馬は大きく嘶くと、そのままおっさんを落とした。
「終わりだ」
次の瞬間、フレイさんの大矛がおっさんを両断する。
「左翼軍大将、フレイ大隊長が討ち取ったぞおおおお!」
俺が大声で戦場に告げる。
「「「「うおおおおおおおおお!」」」」
戦場に歓声が広がる。
一方、フレイはつまらなさそうにこちらを見る。
「おい、シビル。これで終わりじゃねえよな。あんな雑魚殺しただけじゃ何も変わりはしねえ」
「はい。ウィルタイガーが後方に下がっている今、左翼軍に敵は居ません。このまま中央軍の援護に」
「いい考えだ! おい、お前ら! 右翼での戦いは俺達の勝ちだ! このまま、中央軍の戦いに流れ込む! ついて来い!」
フレイはそう言うと、第一大隊を率いてそのまま走り出す。
そのまま、右翼軍は一部を残し皆フレイを追いかけるように、敵中央軍の右わき腹を狙う。
敵中央軍も右翼軍が襲い掛かって来るとは思っていなかったのか、動揺が見られる。
「左翼が崩れたようで、敵軍が左から流れ込んできます!」
敵兵が叫んでいる。
敵が混乱していることが分かる。
敵の右側に完全に食らいつけた。こちらに意識を向けさせることにも成功し援護としては十分だろう。
このまま敵の本陣を狙うべきか?
『敵の本陣を狙うべき?』
『ノー』
だが、メーティスの答えは、ノーだった。まだ、この戦いにおいて、敵の副将、大将の姿を見ていない。奴等を討ち取れれば、この戦いは終わる……。
だが、アンジュさん並の強さだとした場合、討ち取れるビジョンが見えない。俺と、シャロン、フレイさん、三人がかりでならいけるのか?
フレイも本陣に突っ込むことはしていない。本能的なものだろうか。
だが、そこで一つの大隊が動き始める。
「ははっ! フレイ、普段は粋がっているが所詮は臆病者だな! 敵の大将を討つ誉は私が貰う!」
その声の主は、あのガマ男である。奴は第二大隊長として、大隊を率い敵の本陣に向かう。
あのガマ男、何考えてんだ! 無駄に兵を減らすことになるぞ!
「やめろ! 俺達程度じゃ本陣の剣帝は討てない!」
「はっはっ! 所詮は弱い一軍師よ。見ておれ……?」
ガマ男の言葉が止まる。次の瞬間、空から一匹の鳥が舞い降りた。それは大きい、大きい炎を纏った神々しい鳥だった。血なまぐさい戦場には似つかわしくない、とさえ思える程。
その時、皆の動きが不思議と止まった。それほどその巨大鳥に目を奪われたのだ。
その鳥は、ガマ男の目の前まで近づくと、その腕を振るう。
「ヒィッ――」
ガマ男は顔を真っ青にして小さく悲鳴を上げた。
次の瞬間、辺りは血の海に変わった。
「え……?」
俺は全身の汗が噴き出すのを感じる。奴は人間ではない。
覚醒者は人間を辞めている。その言葉を本当の意味で理解していなかったのだ。
全身が震え始め、奥歯がカタカタと音を立てる。奴は今までみたどんな魔物より、生物より恐ろしい。敵対する覚醒者という者を俺は正確に把握していなかった。
その神々しい見た目とは裏腹に、禍々しいほどの魔力が噴出している。
一目見て理解した、奴が今回の敵将『不死鳥』ヨハン・パステルだと。
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