シビル隊、出る
虎が獲物に止めを刺す直前に、獲物のみに集中するように、ウィルタイガーの意識がイヴにのみ集中する。
今なら狙える。
「付与矢・【雷】」
俺の手から放たれた魔法矢は、一直線にウィルタイガーの腕を貫いた。
「ガアア!」
突然の一撃に悲鳴をあげる。
「イヴ、逃げろ!」
俺は叫ぶ。
イヴはその瞬間、体を起こすとレイピアでウィルタイガーの腹部を貫いた。
奴の口から、血が漏れる。
だが、奴の目は死んでいない。足を踏ん張ると、貫かれた腕でイヴ目掛けて爆破したのだ。
イヴはその一撃を受け吹き飛ばされる。
「よくもウィルさんを! あの女を殺せ!」
ウィルタイガーを貫かれた奴の部下は凄い形相でイヴに襲い掛かる。襲い掛かる敵を、敵国騎士団の兵士達が止める。
「うちの部下を殺させるか! 敵将は弱っている! 奴を仕留めろ!」
マルティナが叫ぶ。
第三師団の兵が深手を負ったウィルタイガーを狙い襲い掛かるものの、部下達が必死でウィルタイガーを守っていた。
「ウィルさんを逃がせ!」
かなりの深手を負わせたようだ。
イヴも、同僚に助けられながら少し後方に下がることに成功したようだ。
ウィルタイガーは明らかに敵に中心であり、危険だ。
『ウィルタイガーを討ち取りに向かうべき?』
『ノー』
駄目なのか。
『今討ち取りにいっても、仕留めることはできない?』
『イエス』
やはり空回りに終わるのか。確かに爆虎隊は必死でウィルタイガーを守っている。あれでは討つことも難しいだろう。
『敵左翼軍の大将を討ちに行くべき?』
『イエス』
敵軍の中心となっていた爆虎隊が消えた。ここで敵の左翼軍を潰す。
俺はパンクハット軍をまとめるエルビスさんの元へ急ぎ、頼む。
エルビスさんは無言で頷く。
「第二大隊は敵の減った右側を狙え! 第一大隊は、そのまま前方の敵を押し込め。ヨーク小隊は盾兵を前に!」
エルビスさんの命令を聞き、多くの大隊が動き始める。敵兵はこちらの動きについてこれていない。
やはり左翼軍の大将はたいして役に立つ男ではなさそうだ。
ここで大将を討つ。
「シビル隊、出るぞ! 狙うは左翼軍大将だ!」
「応!」
敵大将を守っているのは千人規模の大隊が一つ。一気に攻め込む。
その大隊は、こちらの第一大隊と激しくぶつかり合っている。そのためこちらに意識を向ける余裕はなさそうだ。
まあ、そのために第三大隊を動かしたんだけどね。
俺は敵の大隊長を見据えると、弓を構える。だが、その射線上に敵兵が入り込む。
邪魔だな……。
シャロンはこちらを一瞬だけ見ると、射線上に入っていた敵兵を斬り倒した。
「シビル!」
「助かった!」
俺は矢を放つ。その矢は見事敵の大隊長の頭部を射貫いた。
「フレイさん! 今です!」
俺は叫ぶ。
「俺に命令するとはいい度胸じゃねえか! 貸しだぜ!」
第一大隊をまとめて戦っていたフレイは笑いながら、崩れた敵陣に流れ込む。
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