表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

204/362

覚醒者

 別動隊を食い止めていた爆虎隊大隊長ウィルタイガーは突如現れたアンジュに苦い顔をしていた。


「隊長、どうしますか? こちらも混乱していますが、敵もまだ混乱しています。後少しで壊滅できそうですが……」


 部下がウィルタイガーに尋ねる。


「いや、止めておく。ある程度攻めた所で、上から落雷が降って来るだけだ。奴が来たということは、帝国騎士団本隊も時期に到着するだろう。こちらも本隊を待とう。それに……覚醒者の相手なんて冗談じゃねえ」


「了解です」


「退くぞ」


 爆虎隊は引き際も早かった。素早く隊をまとめ撤退を行った。

 別動隊も連戦で疲れていたため、追うこともなく初日は痛み分けで終わった。



 パンクハット軍も、バルデン軍もボロボロである。かなり厳しい戦いだったことが分かる。

 全身を血塗れになったフレイが、石に腰かけながらタバコを吸っている。ぴんぴんしていることから殆ど返り血なのだろう。


「おう、シビルだったか。お前、死んでなかったのか。突っ込んでたから死んだと思ったぜ」


「アンジュ様が来なかったら死んでましたね。間違いなく」


「運が良かったな。今日はまだ小競り合いだ。敵も明日には大将と副将が来る。お前も死にたくねえのなら、敵の大将『剣帝』と、副将『不死鳥』には絶対に近づかねえほうがいいぞ。奴等は、覚醒者だ。普通の人間だと思ってるなら大きな間違いだ」


 覚醒者? なんだそれ。聞いたことがない。


「覚醒者?」


「おいおい、お前そんなことも知らねえのか。冒険者ギルドってのはランク制なのは知ってるな。Aランクまでは割といる。だが、Sランクは殆ど居ねえ。帝国のギルドにも七人しか居ねえ。Sランクってのは人間を辞めた化物につく称号なんだ。そいつらは一般的に覚醒者と呼ばれる。化物の柔らかい言い方ってとこだ」


 覚醒者と言われる人物に一人心当たりがあった。


「もしかしてアンジュさんも……」


「ああ。覚醒者だ。こちらで覚醒者と戦えるのはアンジュさんと、副将のポスカさんくらいだ」


「フレイさんでもですか?」


 彼は俺が今まで見た人間の中でも特別強い。

 フレイさんは黙って俺に煙を吹きかけると、立ち上がりどこかに去っていった。




 あんな怪物が、敵に二人も居るのかよ……。俺は憂鬱な思いで暗くなり始めた空を見上げる。


「何呆けているんだお前は……」


「シャロンか。今後を思うと憂鬱でなあ」


「騎士団も明日の朝には到着するらしいが……勝てるだろうか?」


 今日のボロボロの結果を見ての言葉だろう。


「このままだと、まだ勝てないだろうねえ」


「おいおい、冗談だろう? 未来を読めるお前が言うとシャレにならんぞ」


「いっそ逃げるか? 俺の祖国アルテミア王国に行ってもいい。のんびり傭兵団として生きるか」


「……お前は味方を見捨てて逃げられるような男じゃないだろう」


 と呆れるシャロン。


「俺はお前たちの命の方が大事だ。皆が死ぬくらいなら……」


 大きな力に比べて俺達はあまりにもちっぽけだ。


「あんまり思いつめるな。私がお前だけは守ってやる。だから安心しろ」


 なんてイケメン。これ本当は俺が言わないといけない奴だよな。うちの副長はイケメン過ぎる。


「ありがとう。だけど、俺は自分より、シャロンが死ぬ方がつらいよ」


「知ってるさ。そんなお前だからこそ、私は剣を握るのだ」


「それじゃ、どちらも死ねないな」


「ああそうだ。だから……明日も勝つぞ。不敗なんだろう?」


「勿論」


 俺はシャロンを見てにやりと笑う。また負けてはいけない理由が出来てしまった。

 そろそろ軍議が始まる頃だろう、俺はシャロンと別れ本陣の天幕へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  『復讐を誓う転生陰陽師』第1巻11月9日発売予定!
    ★画像タップで購入ページへ飛びます★
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ