応戦
「付与矢・【雷】!」
俺が放った矢に合わせてウィルタイガーは両手をこちらに翳す。
爆発と共に、矢が消し飛ばされた。
こりゃあ随分な対処法だな。
「付与矢・【龍】!」
矢を見た瞬間、顔色を変えたウィルタイガーは即座に体を捻り躱す。僅かに肩にかすっただけだ。
「ハハッ!」
ウィルタイガーは笑うと、馬の速度を加速させる。
「シビル、私がいこう」
シャロンも大剣と盾を持ち、迎撃の構えだ。
「天使の唄!」
シャロンの体に光が集まり、その全身が神々しく輝く。
「聖騎士か! 朱の爆弾!」
ウィルタイガーの両手から球形の爆発が起こる。凄まじい爆音が戦場に響く。
「シャロン!」
俺はその轟音に、思わず声を上げる。
シャロンは盾ごと大きく体を吹き飛ばされたものの、流石は防御主体の聖騎士、体自体に大きな怪我はなさそうだ。
「お前達、私の近くから離れろ」
シャロンはそのまま大剣でウィルタイガーに襲い掛かる。
『シャロンはウィルタイガーに勝てる?』
『ノー』
勝てないのか? 逃がすべきか?
『シャロンを逃がすべき?』
『ノー』
『シャロンは負ける?』
『ノー』
どういうことだ? だが、シャロンが襲われて俺が援護しないわけにはいかん。
俺は弓に矢を番え魔力を込める。
ウィルタイガーの警戒がこちらにも分散されたのを感じる。これだけでも援護になるはずだ。
奴レベルになると、適当に射ても躱されてしまう。
色々考えていたが、この戦いは唐突に終わりを迎えた。
大量の敵の群れを全てなぎ倒し、こちらの大隊長フレイが現れたからだ。
身長は百八十後半ほど。真っ赤な髪を後ろに流し、一房だけ前に垂らした大男である。
ギザギザの歯をむき出しにして笑う。
「そいつが一番強ええな! 俺に譲れ!」
次の瞬間、大矛がウィルタイガーの上に振り下ろされる。
ウィルタイガーは咄嗟に左手を爆破し、その勢いで大きく右へ移動して躱す。
「獄炎のフレイか! 知ってるぜ! 朱の爆弾!」
すぐさま応戦するように、両手でフレイを爆破する。
「おい、退くぞ! 分が悪い!」
だが、ウィルタイガーは敵が集まっていると感じるやいなや、退き始めた。
「おい、逃がすか!」
追いかけるフレイに、ウィルタイガーは指でコインを弾く。
ん? 銅貨か?
俺の頭の疑問符と裏腹に、次の瞬間銅貨は爆発を引き起こした。
「あいつ……物も爆弾に出来るのかよ!」
俺は驚きの声を上げる。
フレイは大した怪我は負っていないが、苛立った顔をしながら後を追った。
嵐のように二人は去っていった。
「シビル、今の状況をどう見る?」
シャロンが尋ねる。
「正直、厳しいな。もう少し減らさないとこのまま人数差で負ける。もうすぐ別動隊が後ろから敵を襲ってくるはずだ。そこに賭けたい」
おそらく敵が残り六千。こちらは二千五百といったところだ。千人別動隊が来てもまだ大分敵の方が多い。
「なるほど。そこが山場な訳だ」
他の持ち場もどこも厳しそうだ。特にあのガマ男の隊。既に結構やられているように見える。
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