奴を仕留める
爆虎隊の中心には、二十歳前半程の男が部下に細かく指示を出している。奴が隊長のウィルタイガーだろう。目つきは悪く、両耳にピアスを開けており、金髪を爆発させている。
「ウィルさん、第一小隊押してます」
「ウィルさん、第二小隊、敵の小隊長を討ち取りました」
「第一、第二はそのままでいい。第三小隊は、歩兵が消耗が大きい。一端引かせて治療してやれ」
「はい!」
部下にてきぱきと指示を出している。皆、心底あの男を信頼しているのか迷いなく動いている。奴の目線が前線に向く。
「オイイ! 俺も出るぞ!」
ウィルタイガーはそう言うやいなや、前線に向かい、その手を翳す。すると、奴の前のローデル兵が爆発で吹き飛んだ。
「ぎゃあああ!」
凄まじい爆発である。何人も一瞬で消し飛んだだろう。ウィルタイガーはすぐさま部下の元へ駆けよる。
「下がれ。戦闘の邪魔だ」
「隊長……俺まだやれます!」
声をかけられた部下は右腕を押さえながら叫ぶ。明らかに重傷であったが、男は退く気はないようだ。
「お前、そんなに死にてえなら今、俺が殺してやろうか?」
部下の首を掴み冷たい声で言う。
「す、すみません。すぐ下がります」
「そうしろ。妹に服をプレゼントするんだろう? ここで死んだら何にもならねえ」
「はい !」
部下は嬉しそうに後方に下がっていく。
「初めから素直に後方で治療しろ、と言えばいいのに」
後ろに付き従っていた部下が笑いながら言う。
「うるせえよ。うちの隊は貧しい奴ばかりだからな。死んだら、誰が家庭を守るんだ。来るぞ」
「随分甘いようだな!」
パンクハット兵がウィルタイガーに襲い掛かる。
「あ? 俺は前線が好きだから来ただけだ」
ウィルタイガーの両手を広げ、翳す。すると、再び両手から大爆発が起こる。鎧が粉々になったローデル兵が宙を舞う。
更に攻めようとするウィルタイガーの元に馬に乗った兵がやってくる。
「ウィルさん、隣のデモン大隊長がやられた!」
「ああ? まだ始まったばかりだぞ。あいつか……遠めでも目立っていたが、上を中心に狩ってやがるな」
ウィルタイガーの目がこちらへ向く。
「オイイ! 百騎出せ! 奴を仕留める!」
「あの弓兵ですか? 確かに厄介ではありますが、それほどですか?」
「一流の弓兵は大変厄介なのもあるが、やつはおそらく指揮官だ。敵の主軸だろう。今叩くに限る」
ウィルタイガーはそう言うと、こちらへ向けて馬を走らせる。
こっち来ちゃったよ。あいつ、かなり強いな。ここで仕留めておきたい。
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