昨日見た名だ
他の隊員も敵兵を次々と倒していく。
「あの隊はどうなってるんだ! 誰か止めろ!」
その横では態度を入れ替えたらしいルイズが死ぬ気で槍で敵兵を仕留めている。
「シビル様! ルイズも! ルイズも活躍しておりますよ!」
ルイズがこちらを見て手を振っている。余裕かましすぎだろ……。
ほら、言わんこっちゃない。背後から敵兵の一撃が迫る。
「今、話してるでしょうが!」
ルイズがその右腕で敵兵に触れる。すると、その敵兵が突如消える。次の瞬間、上空に敵兵が現れ地面に落下した。
「ぐあっ!」
ルイズのスキルは『転移』。右手で触れた物を半径十メートル以内の好きな場所に移動可能らしい。ただし、ナイフを人の体内や、地面に人間を飛ばしたりと既に何か物質のある場所には転移できない。
使いようによっては強そうなんだよなあ。
ルイズは敵兵に触れると、全て敵軍の上空に転移させる。敵兵を落下物として攻撃に使っている。
「ルイズ、気を抜くな! 今回の戦で、今までの恥を拭いたければな!」
「はい、シビル様!」
皆、良く戦ってくれている。俺も隊長として皆を援護しないとな。
俺は敵の指揮官を見据えると、矢を番える。
「付与矢・【雷】」
放たれた矢は、敵将の眉間に直撃した。
「え?」
腑抜けた声と共に、指揮官と思われる男が静かに倒れ落ちる。
「さて……どんどん行こうか」
俺は次々と矢を放ち、小隊長以上の指揮官を射貫いていく。
「お前達、敵は将を失い混乱している! 一気に攻め立てろ!」
シビル隊は、パンクハット軍全体の中でも一際光を放っていた。
『あの男を狙うべき?』
『イエス』
俺の目線の先には敵兵千人を束ねる大隊長の姿があった。
「シャロン、あそこの男を狙う! 他の兵はシャロンの援護を!」
「了解!」
百名の兵士が、一斉にその男の元へ襲い掛かる。大隊長の前に居る兵も先ほど小隊長を射貫いたせいか、動きに精彩がない。
「粋がるなよ、銀髪! 全員でかかれ!」
敵兵も必死で先頭のシャロンを狙う。
「一、二、三、四、五!」
俺は五射し、五人の頭を射貫く。少し数さえ減らせれば、シャロンの刃は必ず届く。
「終わりだ!」
シャロンの大剣が水平に振られると、敵の大隊長の首が刎ね飛ばされた。
「敵将、シャロンが討ち取ったぞ!」
「おおおおおおおおおおおおお!」
一気に敵の大物を討ち取ったことで、ローデル兵たちの歓声があがる。
その勢いは、他の隊にも活力を与える程だ。
前方の敵は完全に崩れた。
戦場を見回し、他の隊の戦いぶりを見つめる。するとすぐ近くの隊が大きく押されている。
「敵は……爆虎隊か」
俺は顔を顰める。昨日見た名前だ。
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