開戦
パンクハット軍とバルデン軍は別々に分かれ戦うことになった。敵軍も、二手に分かれてこちらに戦うつもりなのか、大きく二つに分かれていた。
「今日一日、なんとかしのがないとね」
俺は誰に言うまでもなく、呟く。今日は血が流れる。俺はどうか大切な部下達が一人でも生き残ることを祈った。
太陽が完全に上に上がった頃、両陣営はバギー平野に布陣する。両陣営とも、一陣目は歩兵、二陣目は騎兵である。
皆、緊張した顔で前方を見つめている。
全軍の前に、大将であるエルビスが馬に乗り現れる。今回はしっかりと鎧を着ており、貫禄のある顔でこちらを見る。次の瞬間、優しそうな顔が、鬼気迫るものに変わる。
「パンクハット軍よ。敵兵はこちらより少し多い。そのため不安に思っておる者も居るだろう。だが、我らは偉大なるローデル兵帝国! 奴等のような寄せ集めとは違う! 長らく大陸の中央でその武威を示し続けたローデル帝国兵の誇りと強さを、今こそ侵略者に見せつけろ! 全軍構え!」
その言葉を同時に、全軍が武器を構える。
「突撃ィ!」
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」
その言葉と同時に、放たれた矢のように第一陣の歩兵が槍や剣を持って突撃する。
敵兵も同様に槍や剣を持って突撃し始める。
戦争が始まった。
鎧を来た兵士が全力でぶつかり合う。それは凄まじいエネルギーとして爆ぜた。
甲高い金属音と同時に、鉄球同士がぶつかり合ったような鈍い音が戦場に響く。
「おおお!」
「殺せぇ!」
お互い鬼のような顔で斬り合っている。
俺達シビル隊は全員騎兵なので第二陣として控えている。
「この人数の戦いは、迫力があるね」
ダイヤが怯えながら言う。
「ダイヤは魔法使いなんだ。後方で援護を頼む。絶対前線に出るなよ」
「お金積まれても出ないよ、前線なんて。シビルも気をつけてね。今回は規模も大きいし、策もあまり練れない平野だ」
「分かってる。ダイヤ、気を引き締めろ。そろそろ出るぞ」
「第二陣、突撃せよ!」
大将であるエルビスの号令が全軍に響く。
それと同時に、第二陣の騎馬隊が一斉に走り出す。
「「「「「「かかれーーーーーー!」」」」」」
千を超える騎兵が敵軍目掛けて進む。俺もその迫力に少し鼓動が速くなる。
「ははっ! シビル隊の皆、鍛錬の成果を見せるぞ!」
「「「応っ!」」」
シビル隊も、敵兵に斬りかかる。
激しい乱戦が始まった。
その中で一際目を引くのは、勿論副長のシャロンである。
「えやあ!」
その一振りで多くの敵兵を両断する。A級魔物とすらやり合う聖騎士のシャロンは雑兵など相手にならない。
彼女の目の前に立った敵兵は例外なく一刀両断された。
「奴の後ろにいる弓兵が指揮官だ! 殺せえ!」
敵の小隊長が俺を見て叫ぶ。敵の弓兵が一斉にこちらに矢を向ける。
だが、シャロンは一閃で敵を突破し、弓兵を一振りでなぎ倒す。
「私が生きている間は、決してシビルに触れさせん!」
その鬼気迫る戦い方に敵兵の顔から怯えが見える。
「か、怪物が居る! 先頭に居るあの銀髪を殺せ!」
「強いぞ! 囲ってやるんだ! 一対一になるな!」
敵の指揮官もシャロンの強さに気付いてきたようだ。
だが、うちの隊はシャロンだけじゃないぞ?
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