策
『敵は正面から来る?』
『イエス』
『伏兵は居ない?』
『ノー』
『伏兵は千人以上?』
『イエス』
と言った具合に情報を集める。黙ってひたすらメーティスに尋ねていると、バルデン侯爵から声がかかる。
「君は敵はどう来ると思う?」
「そうですね……敵は人数の理を活かして、左右に伏兵を放っています。二千ずつ、計四千です」
「ほう、そう見るか。バギー平野は横幅だけで数キロある。周囲は確かに森に囲まれているが、この平野の広さじゃ不意打ちまではできんぞ?」
「挟撃だけでも価値があると考えているのではないでしょうか? おそらく人数はあちらの方が上ですので、余裕があります。敵は勝ちは当然、こちらをどう料理するかについて考えている可能性が高いです」
「……確か君は未来を読めるスキルだったか。左右からの伏兵は確かか?」
「間違いなく。敵が進むであろうルートもある程度予想が可能です。これを逆手に取り、油断した伏兵を葬り、逆に背後を狙うべきかと具申します」
俺は地図上に敵が通るであろうルートを示す。
「確かに伏兵を放置はできん。だが、人数差を考えると、そんなに多くは出せんぞ?」
「仰る通りかと。左右に千人ずつ、計二千で伏兵を撃退し、そのまま挟撃に移れれば。二千の兵となると、敵も無視できませぬ」
俺の意見を聞き、バルデン侯爵はリズリーさんへ目を向ける。今の意見についてどう思うか、尋ねているのだろう。
「シビルの未来予知は確かなものです。何でも読める訳では勿論ございませんが、嘘は決して申しません。内容も可能性としては十分にありえるかと」
「リズリーの秘蔵っ子を信じようか」
とバルデン侯爵も納得しかけたその時、一人の男が手を上げる。
「恐れながら申し上げます。そこの新人の言うことがどれほど正しいのか、疑問ですな」
手を上げたのはパンクハット軍一人の大隊長である。
軍は、百人をまとめ上げる小隊長、五百人をまとめる中隊長、千人をまとめる大隊長が大まかに居る。
目の前の太った大隊長は千人の将だという訳だ。こちらを見て意地汚い笑みを浮かべている。
「ほう……私達の決定に異論をつけるか?」
「いえ、そのような。ですが、この者が本当に未来を読めるのであれば、なぜ今回の戦争を予知できなかったのか。もし知っていて黙っていた場合、大罪ですぞ」
蛙のような顔を歪ませる。このガマ野郎。ガマ隊長って呼んでやるからな。
「シビルは未来が全て読める訳ではない。それに前回の戦で見事な計画を練ったことは知っているだろう」
「まあ、良いです。私は私で動かさせていただく。勿論、エルビスさんのいうことなら聞きますが、そこの軍師もどきについて懐疑的だとは言わせていただきますよ」
と煽る。うーん、こいつ俺の意見を聞いて納得した上官に失礼だと思わないのか?
「納得したようだな。では、各軍から千人ずつ別動隊を出す。このルートを通るのであれば、ここから不意打ちができる。別動隊については、最適な場所を考えよう」
別動隊の大隊長が各軍から指名され、伏兵狩りについて話し合いが始まった。俺もその話し合いに参加し、最も不意打ちに向いた場所を伝える。
別動隊を抜くと、七千対一万五千と戦いとなる。厳しい戦いになりそうだ。
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!
評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!





