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先駆け

 村を発って一日半、俺達は行軍中のパンクハット軍に合流した。人数は二百ちょっと。どれも動きが洗練されている。精鋭部隊だろう。


「シビルさん、来てくれたんですね。リズリー様は先頭にいらっしゃると思います」


 声をかけてくれたのは元シビル隊の兵士だ。どうやら軍を分けて向かっているようで、本隊は既に前線で戦っているのだろう。


「ありがとう。個人的に徴兵した兵士が居るんだが、その兵の服はあるか?」


「ありますよ。助かります。兵士が圧倒的に足りていませんから」


 兵士に三百人分の服の用意を頼む。とは言っても白虎隊は別動隊でこの場には居ない。貴重な兵をやみくもに減らしたくはない。

 その後、リズリーさんに挨拶に向かう。確かに先頭にリズリーさんは居た。少し顔色が悪い。


「リズリー様、遅れて申し訳ありません。シビル、馳せ参じました」


「おお、シビルか! よく来てくれた! 今前線に向かっているところだ」


「状況の確認ができればと、思っております」


「ああ。敵兵は現在二万程確認している。だが、まだまだ増えている。最終的には五万程になるだろう」


「冗談だと思いたい数ですね」


 メーティスで敵の数は確認していたが、頭が痛い。戦争とはいえ、規模が大きすぎる。


「まじだ。帝国騎士団の援軍が到着するまで我々パンクハット軍とバルデン侯爵の軍、二軍で対応することになる。数は我々四千と、バルデン軍五千だ」


 OH NICE JOKE!

 正気とは思えないぜ! 倍以上差があるじゃねえか。


「盾にもなりませんよ、そんな数じゃ」


「分かっている。帝国騎士団の援軍が到着すれば、少しはましになるとは思うが……いつ来るか。それを待っていれば、我々二領は膨大な侵略を許すことになる。シビル、帝国騎士団本隊はいつ到着する?」


 話を聞くと、隣接しているパンクハット領と、バルデン領は既に侵略されているらしい。バルデン領はパンクハット領の北にあったはず。


『帝国騎士団本隊は三日以内に到着する?』

『イエス』


『帝国騎士団本隊は二日以内に到着する?』

『イエス』


『帝国騎士団本隊は一日以内に到着する?』

『ノー』


 二日か……。かなり厳しいな。だが、帝都からこちらまで来るのならかなり速い。万を超える軍勢は引っ張り出すだけでもかなり時間がかかる。


「二日程かと」


「そうか……」


「明後日まで持ちますかね?」


「持たさねばなるまい。我々が抜かれることがあれば、どれだけ多くの領民の命が犠牲になるか分からん」


 リズリーさんは自分に言い聞かせるように言う。

 どうやら状況はすこぶるよくないらしい。話しているうちに俺達は森に入る。

 森や色々な場所から火の手が上がっている。おそらく至る所で村が襲われている。


「リズリー様、そろそろ敵兵が見える頃かと。ご警戒を」


 索敵をしている斥候がリズリーさんに伝える。


「この森は荒熊(ワイルドグリズリー)の住処だったはず。そして近くの岩山に至っては巌窟龍の住処だ。敵兵は勿論だが、魔物にも気をつけろ」


 リズリーさんが部下に言う。荒熊は確かC級、巌窟龍に至ってはS級の怪物である。巌窟龍はパンクハット領の生態系の頂点に君臨すると言ってもいい。


「はっ!」


 部下達は周囲を警戒しながら進む。


「リズリー様、村が襲われております! 敵兵は六百!」


 斥候が再び報告を告げる。こちらはシビル隊が七十五人。リズリーさんの近衛兵を入れて計三百といった所だ。


「厳しいな……助けてやりたいが……」


 リズリーさんが考え込む。勝てるかどうか、勝った場合でも兵の減りを気にしているのだろう。


『この中突入して敵将を討てる?』

『イエス』


 いける。俺はこれはチャンスととらえた。


「リズリー様、これは敵兵を減らすチャンスを捉えましょう。敵に村を襲っていると、狙われるということを教えた方がいいです」


「確かにそれはそうだが、勝てるか?」


「今は勝利の余韻に浸り油断しきっています。と言えど、全力でぶつかり合えば、こちらもダメージを受けます。兵が少ない以上不利は必死。 トップだけ狩って敵を逃がします。 四方から囲まれているように見せかけ、人数をごまかします」


 俺は即座にメーティスに確認するも、成功するとお墨付きを得た。


「分かった。我が軍師に任せよう。兵三百は好きに使え。後シビル隊が減っているな。百になるよう近衛から引き抜いていい」


「有難く。必ずや勝利を持ってまいります」


 俺は早速兵二百で村を包囲するも東だけは包囲を緩くする。敵はこちらの人数をまだ把握していない。こちらの方が多く見せるのだ。


『敵将は彼?』

『ノー』


『敵将は彼?』

『イエス』


 敵将を見つける。そして、シビル隊百で一斉に襲い掛かり将を討つ。


「この戦いは速さが勝負だ。シャロン、あの敵将までノンストップで駆け寄り、一瞬で討つ。できるな?」


「無論だ」


 シャロンは笑う。俺は最後に細かな指示を皆に伝える。


「では行くぞ」


 俺達は馬を駆り、敵将目掛けて百人で襲い掛かる。

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