ハルカ共和国
ローデル帝国の東にあるハルカ共和国は貧しい国だ。その一番の理由は作物の育たない不毛な土地が、多くを占めていることだろう。
ハルカ共和国出兵の二日前、首都ハイムにある議事堂ではハルカ共和国の有力者達が真剣な顔で議論を繰り広げていた。
「もううちには余力がない。ここで動かねば、国は亡びる。なんとしてもローデルの広大な、肥沃な土地を奪わねば我が国に未来はない」
大きな円卓で最も立派な木製の椅子に座り、参加者に話しかけているのはハルカ共和国国家元首、ベイル・ドルチェ。齢七十を超え長年ハルカ共和国を支えた英傑である。
真っ白に染まった太く長い眉に、サンタクロースのように伸びた髭。伸びきった長い白髪は仙人を思わせる。
「ローデル帝国に勝てると本気で思っているのですか? 帝国騎士団の強さは貴方も知っているでしょう」
髭を生やした中年男性が発言する。
「なら、どうする? 既に貧しい地域では餓死の報告が上がっている。食料援助の申し出などしたところで、属国になることを勧められるだけじゃ。奴等が援助してくれる今しかチャンスはない」
「あんな犯罪組織、六翼の援助など受けて今後どうなるか……。私は反対だ!」
「では代替案を頼む。ミユル穀倉地帯を失った我が国の食料問題の解決方法をな」
それを聞いた中年男性の顔が苦虫を嚙み潰したように歪む。今回の論争の発端は、ハルカ共和国を支えていたミユル穀倉地帯が突如完全に枯れてしまったことに起因する。
食料問題が格段に悪化してしまい、貧民に食べ物が行き渡らなくなってしまった。
隣国であるローデル帝国とは犬猿の仲といっても良い。食料援助の申出など通るとは思えない関係性であった。
追い詰められたハルカ共和国が藁にもすがる思いで縋ったものは戦闘集団『セラフの六翼』であった。
皆、それが善意からでなく、毒薬を体内に入れるが如き愚かな行為であることは知っていた。だが、それほど彼等は追い詰められていた。
「お主がこの国を案じて言うてくれておることはよう分かっておる。六翼の危険性もじゃ。決して奴等に手綱は渡さん。あくまで利用するだけ。既に奴等は動いてくれておる。大魔境から百を超える飛竜がローデルに向かったと聞いた。彼等の仕業であろう。この機会を逃す訳にはいかん。大将は、我が国が誇る『剣帝』エスター・コルクに任せる。戦争じゃ。皆の者、覚悟を決めろ」
国家元首ベイルの覚悟のこもった声が議事堂に響く。
反対していた男も、諦め小さく項垂れた。
「「「「「「はい!」」」」」
こうしてハルカ共和国の出兵が決まった。
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