エピローグ
「腰が入っていないな」
家を建てるために木々を伐っていると、後ろからライナスから声がかかる。
「また手伝いに来てくれたのか、ありがとう」
白虎族の皆さんは自分達の新しい村もまだできていないのに、こちらに手伝いの者を送ってくれる。
「なに、これくらいで借りを返せるとは思っていないさ」
白虎族の皆は俺を命の恩人として認識しているのか、皆大変優しいのだが、自分の村を守る意味もあったのだからそこまで感謝されると申し訳なさもある。
二人で無言で木を伐っていると、再度ライナスが口を開く。
「あの魔蟲達は、大樹様に巣食っていたようだ。燃えた大樹様の亡骸には、魔蟲の抜け殻が残っていた。そして……族長の亡骸も発見された」
「それはご冥福をお祈りします」
大樹を焼却する役目を請け負っていた族長が、あの場に来ていなかった時点で察していたが やはりか。
体調が万全ならば易々とはやられなかったとは思うが……。
「ありがとう。そして次の族長は俺になった」
「おめでとうでいいのかな?」
「いや……正直俺には荷が重いな。まだ若すぎる。おそらく俺が、シビルと仲がいいからだろう」
なるほど。近くの村の村長と仲が良い者が族長の方が良いという考えか。
「まあ、それを含めても今後もよろしくお願いしますよ。族長」
俺は頭を下げる。これからもお世話になることになるだろうからだ。
一方ライナスはそれに聞いた後神妙な面持ちで、突然跪く。
「今回の呪樹病については大変お世話になりました。白虎族の代表としてお礼申し上げます。この度の御恩、族長として決して忘れません。今後、シビルさんに何かあった場合白虎族として命にかえても借りを返させていただきます」
ライナスは真面目な顔でこちらを見つめている。これは今までと違い本気の顔である。ならば俺が返す言葉は一つしかないだろう。
「ありがとう。頼りにしているよ、ライナス」
「必ずや、白虎族の誇りにかけてお役に立って見せます」
俺は左手を差し出した。ライナスはそれを掴む。
俺は白虎族という予期せぬカードを手に入れることとなった。まあ、今は辺境に居る。そうトラブルばかり降っては来ないだろう。
俺はライナスを立ち上がらせると、木こり作業に戻ることにした。
シビルが木こりになっている頃、パンクハット領にあるリズリーの屋敷は蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。
「本当か!? 見間違いじゃないだろうな?」
「本当です! 私も信じられません……」
リズリーが疲れ切っている部下に大声で尋ねるも、部下も気丈に返事を返す。
「リズリー様、もう時間がありません。一刻もはやくここからの離脱を!」
「いや……それだけはできん。ここはハルカ共和国と接するローデルの盾となる場所。簡単に逃げることなどできん。たとえ、数万を超える軍が来たとしてもな……」
リズリーの顔は少し青くなっているものの、まだ脳は動いていた。
「至急シビルを呼べ。ハルカ共和国と戦争だとな。帝都にも応援を。これは国家規模の戦争になる」
パンクハット領やその他ローデル帝国領へ進軍してきたのはハルカ共和国の兵合計五万。パンクハット軍より十倍以上の数である。
だが、リズリーはまだ把握していなかった。ローデル帝国の北にある大魔境から百を超える飛竜がローデル帝国北部領を襲っていたことを。
戦争が再び始まる。
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