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天使の唄

 それから十五分、俺達は必死で戦うもいまだ有効打は全く決まる気配が無い。俺達の巨大百足は一進一退の攻防を繰り広げているように見えるが、ダメージが入らない。

 A級の魔物の固さを甘く見ていた。

 俺達の苦戦に、周りの兵達の顔も曇り始める。


「もう、無理です! 数が足りません!」


 兵士の一人がこちらを見て叫ぶ。

 既に結構な数の兵士が戦闘不能になっており、このままでは前線が崩れる。

 どうするべきだ? 退く? それともこのまま戦う?


『撤退すべき?』

『イエス』


 理屈で言えば、やっぱりそうだ。分かってる。そもそもこの戦闘自体がおそらくメーティスに相談すれば反対だっただろう。

 だが、ここで撤退すれば集会所に居る百人以上の村人が殺されるだろう。


 俺はそれを斬り捨てられない。

 トップとは決断すべき生物だ。たとえ自分の決断が間違っていた場合は頭を下げてでも。


 俺は集中とは無縁の精神状態で、ただ援護のために矢を番える。だが、矢の先はぶれぶれだ。こんな状態で当たる訳がない。

 体から血の気が引いていく。だが、そんな動揺をシャロンは見抜いていたらしい。


「シビル! 動揺するな! ここには私が居る。私が必ずお前を守ってやる。こいつの攻撃はお前の元へは決して通さない。だから、恐れるな。お前はただ弓を引け! 勝てるんだろう?」


 シャロンはこちらを見て微笑んだ。俺のことを信じ切っている顔だ。


「カテル? ワラワセル」


 嘲りを含んだ笑いを見せた巨大百足は六本の腕を全てシャロンに向ける。


「シャロン!」


 俺は援護のため矢を放つが、遂に他の魔蟲が射線に入り妨害を始めた。

 駄目だ……もう人手が足りないんだ。俺はシャロンを援護するため矢を乱射する。だが、消し飛んでいくのは雑魚の魔蟲ばかりだ。


 だが、俺の心配を別にシャロンはその盾を使い、巨大百足の猛攻を全て防ぎきる。少しずつ、攻撃を受けても後退しないようになっている。

 渾身の猛攻を防がれた巨大百足は苛立ちから叫ぶ。


「エサのブンザイデ……ウシロノザコカラダ」


 巨大百足は標的を俺に変え始めた。


「通さないと言ったはずだ! 天使の唄(ホワイトソング )!」


 シャロンは高らかに剣を掲げる。シャロンの体に光が集まり、その全身が神々しく輝く。今までとは明らかに輝きが違う。

 これが聖騎士……! 俺は今まで本物聖騎士を見たことが無いのだと、悟る。

 シャロンは鎧を纏っているとは思えないような速度で移動すると、俺に襲い掛かる六本の腕を次々と盾で弾き返す。

 そして襲い掛かる最後の一本を一閃した。


「ギュイイイイイイイイ!」


 腕の一本を切断された巨大百足が大きな悲鳴を上げる。鋼鉄で出来たとしか思えない腕が遂に切断された。

 巨大百足の目が怒りで真っ赤に染まっている。


「コノ……ゴミドモガ……!オマエタチ……ゼンインデコイツヲコロセ!」


 地を揺るがすような叫びが村中に響き渡る。

 色々な場所で戦っていた魔蟲が一斉にこちらに目を向ける。

 先ほどの一撃は確かに巨大百足に絶大なダメージを与えたようだ。

 流石にまだ何百匹も残っている魔蟲全てと一斉に戦えるとは思えない。本気で撤退を考え始める。


 だが、その時背後から声が聞こえた。


「よっぽど焦っているようだな。害虫が!」


 まるで飛んでいるかのような一足飛びで魔蟲達に襲い掛かったのはライナスである。いつもと違い、虎の手で魔蟲を一瞬で何匹も斬り裂いた。


「ライナス……!」


 俺は大声を上げる。


「お前達、村の恩人に今こそ借りを返すんだ! 害虫達も根絶やしにしろ!」


 叫びと共に現れたのは百人近い獣人達だった。顔色が悪い者もまだ多い。それでも援護のために来てくれたのだろう。


「皆さん……!」


「シビルさん、あの周りの雑魚は全て我らが受け持ちます。ご安心を」


 獣人の青年がにっこりと笑う。頼もしさを感じる。

 兵士達も強そうな援軍に大いに沸いた。


「か、勝てるぞ!」


 一方、それを不快そうに見ていたのは巨大百足である。

 怒りに任せてシャロンに襲い掛かる。シャロンはどっしりと構え、その一撃を受け止める。


「コロシテヤル!」


「かかって来いよ」


 シャロンはそう言って笑った。

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[気になる点] >俺達の巨大百足は一進一退の攻防を繰 俺達と ではないでしょうか。
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