イキルタメ、クラウ
俺達は村へ向かって進軍を開始した。村に辿り着くまでに特に魔蟲達の姿はなかった。医者のお爺さんに、獣人達に逃げるように伝えてもらうよう依頼した。お爺さんは二つ返事で了承してくれたのでそれは大丈夫だろう。
「正直ルイズの隊は信用できんぞ。任せて大丈夫か?」
シャロンが小声で尋ねてくる。ルイズ率いる第三部隊は信用できないので、今回は俺達と同じ場所に配置している。
『ルイズの隊は、裏切って逃げる?』
『ノー』
「大丈夫だ。裏切って逃げたりはしないらしい」
「メーティスで確認済ならいいが……それにしても多いな。気持ち悪い光景だ」
シャロンは集会所を見て呟く。
集会所は魔蟲によって埋め尽くされていた。集会所には大きな穴が空いており、そこから魔蟲が出たり入ったりしている。さながら巨大な蜂の巣といったところだ。
「建物自体は壊されている。おそらく地下に潜っているんだろうが、長くは持たんだろうな」
今頃ダイヤ達が頑張ってくん煙剤を作成してくれているんだろうが、ゆっくり待つ時間もないんだよなあ。
俺はランドールを構えると、矢の宣端を上空へ向ける。
「それでは……開戦だ!」
魔力の籠った矢が集会所の上空に打ちあがる。開戦の合図だ。
「かかれええええ!」
シャロンの叫びと共に、兵士達が魔蟲に襲い掛かる。
俺はすぐさま再度矢を構える。
「付与矢・【雷】」
俺の手を離れた矢は流星の如く巨大百足の頭部に命中し、地面に落ちる。頭部も随分固いらしい。
巨大百足はその四つの目をこちらに鬱陶し気に向ける。
「お前の相手は俺達だよ、でか百足」
俺は笑いながら挑発する。
隣では両手を口にあて震えるルイズの姿がある。
「ば、馬鹿じゃない……⁉ こ、こっち見た! あれ、本物のエーデルスコーピオンよ。は、初めて見た」
巨大百足はエーデルスコーピオンというのか。巨大百足でいいだろう。
「ルイズ様、どうします?」
横の兵士も慌てながらルイズの顔色を窺っている。
「お前ら、あのでか百足と戦えとは言わん。周囲の魔蟲を倒せ。俺達の戦いの邪魔はさせるな」
「……い、行くわよ!」
ルイズは槍を構えると、周囲の魔蟲に襲い掛かる。大きく巨大百足から距離を取りながら。第三部隊の兵士達もルイズに続き、剣を振るう。
「こいつら、一体一体が結構強いぞ!」
「頭を狙え!」
どこも苦戦しそうだ。
シャロンも大剣と盾を構え、巨大百足を見据える。
「参る!」
シャロンはいっきに距離を詰めるべく襲い掛かる。巨大百足は六本の腕を使いシャロンを近づけさせない。腕のドリルがシャロンの盾に突き刺さり、大きく吹き飛ばす。
「ちっ」
「ギチ……オマエタチ……ヒトノクセニ……シブトイナ」
「言語を⁉」
俺は驚きの声を上げる。高位の魔物は言語を操ると聞いたことがあるが、巨大百足が話すとは思えなかったからだ。
「オレ……ハナセル」
「なら俺達の言葉も分かるな。なぜ人を襲う。おとなしくどこかへ去れ」
「ヒト……ウマイ。イキルタメ……クラウ」
「他の生物じゃ駄目なのか?」
「ホカ……マズイ。ヒト、エサ。シネ」
巨大百足は話は終わったと言わんばかりに六本腕を広げ再度シャロンに襲い掛かる。取り付く島もないとはこのことである。
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