剣をとれ
『あの魔蟲の長に弱点はある?』
『イエス』
『それは部位?』
『イエス』
『腕?』
『ノー』
『尻尾?』
『ノー』
『顔?』
『ノー』
『腹部?』
『イエス』
腹部か。
『六本腕に囲まれている腹部?』
『イエス』
なるほど。中々難しいことをおっしゃる。
「シャロン、あの化物の弱点は六本腕に囲まれている腹部らしい」
「あのドリルのような六本腕に囲まれた? 中々狙いにくい所を……」
「まあ他よりも装甲が薄そうだもんな」
「他に弱点は無いのか? 部下に任せると言ってもあの数を倒せるとは思えんぞ」
「ちょっと調べてみる」
『今回現れた魔蟲全体の弱点はある?』
『イエス』
『部位?』
『ノー』
『魔法?』
『ノー』
うーん、分からん。殺虫剤か? 魔蟲にも効くのだろうか。
『くん煙剤?』
『イエス』
農家が焚く虫よけの農薬的な物だろうか。今からそれをゆっくり調べ切る時間はない。
この村には農家が多い。誰か知っているか調べるしかない。
『この村人の誰かが効果のあるくん煙剤を知っている?』
『イエス』
『六十以上の人?』
『イエス』
『性別は男?』
『ノー』
六十以上の女性か。
「すまない! 六十以上の女性に集まって貰えないだろうか! 聞きたいことがある!」
そう言って、村人に声をかける。
集まってきた老人は十五人程。
「誰か虫に効く、くん煙剤の作り方は知りませんか?」
「知ってはいるが、あんなでかい虫に効くとは思えんのう」
そう言って声を上げたのは、白髪交じりで背の曲がった御婆さんである。何度か挨拶もしたことがある。
『この人が知っている?』
『イエス』
「そのくん煙剤で構いません。完全に倒せるとは思っておりません。少しでも動きを鈍らせることができれば儲け物と考えています。できればあの群れに効く範囲で大量に作りたいんですが」
「そこまでかからんじゃろうが……効くか保証はできんぞ。精々小さな虫くらいにしか使ったことは無い」
「お願いします。今から三十分後には村に向かいます。それまでに出来そうですか?」
「そりゃあ無理じゃ。物も取りに行かちゃあならん。儂の家にあるが……」
お婆さんをあの戦場に放り込むのも気が引ける。
「僕がやり方を聞いて、お婆ちゃんの家で作るよ!」
ダイヤが声をあげる。
「素人じゃ心配じゃ。儂も行こう。今更あの世なんて怖くないからのう。お前が儂を護衛すればいい」
自分も行くと言い張るお婆さん。大丈夫だろうか。だが言い争っている暇はない。
「分かりました。それでお願いします」
「任せとけ! 年寄りにもできるところをみせてやるわい!」
お婆さんがすっかり張り切っていらっしゃる。
「シビル隊、集合してくれ。これから村人の救出作戦を行う!」
俺はシビル隊を集合させる。兵士達の多くは覚悟を決めた顔をしている。 俺は目線をシビル隊全体に向ける。
「村を取り返し、村人を救い出す! 剣を取れ!」
俺はいつものように堂々と言い放つ。たとえどれだけこちらが不利であっても。余裕綽綽で、にやりと笑う。これはトップの条件だ。
「「「応!」」」
戦が始まる。
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