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ヒーローだから

「ここではぐれたの?」


「ううん……」


 どうやら、ここには近所の人に連れられて逃げてきたようだ。


「この子のお母さん知りませんかー?」


 俺は村人達に尋ねるも、皆顔を横にふる。


『この子のお母さんはここには居ない?』

『イエス』


『この子のお母さんは生きている?』

『イエス』


 どうやら生きてはいるらしい。東や西に逃げたのか? 


「確か、集会所近くで見たが……それ以降は分からんなあ」


 と村人が言う。


 まさか……集会所で篭城してるなんてことはないよな? A級魔物相手にどれだけ持つんだ……。


『この子のお母さんは集会所で篭城している?』

『イエス』


「ふう……。嫌な予感してたんだ」


 俺は頭を抱えながら呟いた。


「お母さん、村に居るの?」


「うん。村で隠れてるんだって」


「お母さん強くないよ……。お母さん死んじゃうよ……」


 少女は目に涙を溜めながら言う。


『集会所は一日持つ?』

『ノー』


『集会所は一時間持つ?』

『ノー』


 やっぱり長くは持たないか。どうやら後五十分程で集会所は完全に破壊されるようだ。正直このままろくな準備もせずに挑むのは自殺行為以外の何物でもない。

 俺は少女の方を向くと、腰を下ろし目を合わせる。


「大丈夫だよ。すぐにお母さんを助けに行くからね。これでも皆強いんだ。だから、任せて?」


 俺はにっこりと笑う。

 この言葉以外、少女にかける言葉は思いつかなかった。

 だって俺は周囲の皆を助けるために軍に入ったのだから。たとえ勝算がなかったとしても。


『おいおい、本気か? お前の攻撃、さっき全然聞いてなかったじゃねえか! 自殺行為じゃねえか?』


 脳内でランドールが騒がしい。


『分かってるさ。だけど……放ってはおけないだろう?』


『戦場ではお人よしから死ぬって、知ってるか? お前が死んじまったらまた俺は一から持ち主を探さねえといけねえじゃねえか』


『それが嫌なら俺の手助けを頼むよ、相棒』


『諦める気はないわけね……お人よしなこって』


 ランドールはそこで話を締めくくった。危険なのは分かってるさ。


「お兄ちゃんが強くても勝てないよ……凄くおっきかったもん」


「大丈夫! 俺は英雄(ヒーロー)だから。あんな蟲、すぐに倒してくるから。少しだけここで待ってて?」


 俺は胸板を力強く叩く。少し痛い。


「……うん」


 少女は手で涙を拭うと、少しだけ微笑んだ。

 それを見て、ルイズは少女の話を聞いた後から暗い顔をしている。そして、ぽつりとつぶやいた。


「隊長……すみません」


「……お前だけのせいじゃない。俺ももっと警戒しておけばよかったからな。だが、俺達は騎士だ。お前の反省は剣で示せ」


「はい……」


 どうやら少しは反省しているようだ。


「安請負なんかして……勝算はあるんだろうな?」


 シャロンが呆れたような口調で言う。


「俺とシャロンのコンビで、トップを潰す! 周りの魔物は部下に任せる!」


「なんだそれは……ほぼノープランじゃないか……」


「あれ? シャロン様ともあろう者が自信がない?」


「言うじゃないか……この戦いが終わったら覚えていろよ」


「覚えていよう。まだ少しだけ時間がある。この時間で少しでも勝率を上げよう」



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