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お母さんどこ?

 村から離れ走ること二十分後、木の下で休む村人達の集団を発見した。その中には村長のすがたもあった。


「シ、シビルさんご無事でしたか!? 良かったです……」


 村長の顔は暗い。人数は数百人ほど。半分ほどはまだ逃げているか、死んでいるかだろう。


「村長さんもご無事で何よりです。ですが……これは中々酷い状況ですね」


 周りも皆顔が暗い。相当参っているようだ。

 集団の中で一箇所どこか騒がしい場所がある。そちらに目を向けると村人達に糾弾されるルイズの姿があった。


「俺見たんだ! この女が、警備をさぼっていたのを!」


「こいつは普段からやる気がなかった! どうせ貴族様から見たらこんな村どうでもいいと思ってるんだろう!」


「シビルさんへの態度も悪いって聞いたぞ! こいつのせいで村は……!」


 憎しみのこもった目で見られているルイズは目を逸らす。


「五月蠅いわね! 偶然、席を外した瞬間に襲ってきたのよ……」


「あんたがサボったせいで……うちの長男は……長男は……うぅ……」


 おそらく子供を失った母親が、泣き崩れる。流石にこれには堪えたのか、静かに唇を嚙みしめている。


『ルイズは警備をさぼっていた?』

『イエス』


 だろうな……。普段から不真面目なのは知っていたが……この女を警備に任せたこと自体が失敗だったのだろう。俺達もそちらに向かう。


「ルイズ、お前何をしていた? そして村人の皆さん、今回は私の失態です。このような者に警備を任せたのは私です」


 俺は深々と頭を下げる。それを見て村人も困った顔をする。


「シビルさんが村のために色々頑張ってくれているのも知っている。だから、あんたは責めれねえよ……。だが、そこの女は別だ!」


「私からも強く言っておきます。そして厳罰を」


「分かった……シビルさんを信じよう」


 村人達は渋々口を閉ざす。俺は村人に話し終えると、ルイズに目を向ける。


「ふざけるな! 全員で離れるようなことをするな! と言っていただろうが! お前の……お前のその下らない行動でどれだけ犠牲が大きくなったと思っているんだ!」


「……なによ! あんな田舎にあんな数の化物が出るなんて誰が思うのよ!」


 反省どころか逆切れである。

 それを聞いていたシャロンがルイズの胸倉を掴み、睨みつける


「確かに平和な村の警備は退屈かもしれない。だが、私達の仕事は、殆ど来ない危険から村人を守るためにあるんだ。肝心な時に役に立たない兵士が何の役に立つんだ! もういい。沙汰は後で言い渡す」


 ルイズは悔しそうな顔をしつつも、反論はしない。流石に自分のやらかしたことの重大さに気付いているのだろう。

 第三部隊の兵士達も皆口を閉ざし下を向いている。 

 逃げた人々がどんどんこちらに集まってきている。


「シビル、シビル隊はほぼそろった。どうする?」


 戦うべきか、否かということだろう。A級をトップにした魔物五百体。明らかに百人では持て余す数だ。

 不思議と魔物達はまだこちらへ向かっていない。ライナス達に伝えた後、皆で逃げて援軍を呼ぶべきだろう。


「いや、ここは撤退した後、リズリー様に援軍を頼もう。無理に戦う必要はない」


「……承知した」


 俺は村人の人数を把握しようと数を数える。

 そこで一人の女の子がきょろきょろと誰かを探しているのを発見する。俺によく挨拶をしてくれる少女である。だが、顔は暗く今にも泣きだしそうだ。


「どうしたの?」


「お母さんが居ないの……お母さんどこ?」


 少女は俯きながら、消え入るような声で言った。

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