襲撃
シビルの管理するコラク村では現在四つに分かれているシビル隊が順に警備を担当している。
今日の警備担当は、ルイズ率いる第三部隊であった。
ルイズは赤髪の先を指で弄りながら、足を組み溜息を吐く。
「はあ、面倒くさ。こんな田舎の村を攻めてくる奴いると思ってんの? そんなのあの馬鹿な盗賊くらいよ」
「ルイズ様、暇ですねえ。警備が始まってから一度も攻められたことないですからね」
「たまに出る魔物を追い払うくらい。もう嫌。早く帝都に帰りたいわ。すぐ帝国騎士団に所属できると思ってたのに、なんでこんな田舎に。上官もゴミだし。もう今日の警備は終わり! 帰るわよ!」
ルイズは椅子から立ち上がると、村に戻るよう促す。
「大丈夫ですかね? 魔物とか来たら……」
ルイズの部下である男が心配そうに言う。
「少しくらい来てもすぐ対応できるわよ。お父様が送ってくださったケーキが食べたいの。速く!」
「は、はい!」
男はルイズの不機嫌さを感じ取ったのか、立ち上がる。男はちらりと村の外を見渡すも、何も見えなかったためそのまま村へ戻った。
大量の魔物が村へ向かっているとも知らずに。
初めに気付いたのは村の外で農業をしている青年だった。青い空の一部が黒くなっていることに違和感を感じたのだ。
段々黒い何かが移動していることに気付く。
「なんだ、あれ……。魔、魔物だ……!」
男は魔物の数に圧倒されるも、もつれる足で村に逃げる。
「シビルさんに、伝えねえと!」
だが、魔物の速度は青年より速かった。刻一刻と近づいてくる群れに青年の顔が絶望に染まる。
「魔物の群れが来たぞーーーーーーー!」
青年の自分の死を察し、最後に大声を上げた。村の者に伝えるために。次の瞬間、巨大百足の六本のドリルが彼の心臓を貫いた。そのまま百足は彼の体を持ちあげると捕食し、進軍を再開した。
「何か聞こえたような……」
俺は何か悲鳴のようなものが聞こえた気がして、外に出る。
外では既にパニックになっていた。
「シ、シビルさん! 北部から魔物の群れが!」
北から走ってきて息も絶え絶えになった女性が、なんとか口にする。
「魔物が!?」
俺は最近森のことに忙しく、日々の襲撃についてメーティスに尋ねることを忘れていたことに気付く。
『コラク村は今、魔物に襲われている?』
『イエス』
ヤバいな……。俺は自分の油断を恥じるとともに、時間がないことを感じる。
『襲撃は北部からのみ?』
『イエス』
『数は百以上?』
『イエス』
シャロンとダイヤも異変を感じたのか、外にやってきた。
「ダイヤ、シャロン、魔物の襲撃だ! どこから来たのか分からんが、北部から。数は百以上。ダイヤは村に居るシビル隊を集めて北部へ。シャロンは俺と共に現場へ向かう」
「了解だ、隊長」
「分かった! すぐ人を集めて僕も向かうよ!」
既に北部からは大量の悲鳴が聞こえてくる。警備の者が居たはず……なぜシビル隊から報告がない。今日は第三部隊の者達が担当のはず、皆一瞬でやられたのか?
謎だらけではあるが、考えている時間も無い。
俺達は北へ向かった。
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