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怪物

 ロブは森から離れた所で、積まれている木々を見つめていた。これらは全て呪樹病に侵された木々である。その一番下には、巨大な木、大樹様が横に置かれている。

 燃やした木が延焼しないように森から離れたところで焼却するためだ。

 ロブは悲しい顔で大樹に触れる。


「すみません。今までお世話になったのに、こんな最後になるなんて。せめて最後は俺の手で終わらさせてください。罪は俺が背負います。なので、どうか村の奴等は恨まんで下さい」


 ロブは大量の油を木々にかける。

 最後にロブは火を焚くと、油のかかった大樹に火を投げる。

 その火は少しずつ燃え上がり、やがて大炎となった。


「さようなら、大樹様」


 ロブはただその燃えゆく木々を見つめていた。

 だが、燃えるにつれて大樹から何か蠢くような音が響く。やがてその音は大きくなり、遂に産声を上げる。


「ギュイイイイイイイイイイ!」


 大樹から生まれたのは、巨大な羽の生えた百足だった。全長四メートルを超える百足に四つの大きな羽が生えている。大量の足とは別に、六本の巨大な硬い装甲に守られたドリルのような腕が生えている。

 全身が鎧に包まれているような怪物である。


「な……お前が! お前が大樹様を!」


 ロブの全身から殺気が溢れ出す。ロブはその戦闘経験から目の前の魔物の恐ろしさを一瞬で察していた。このままこの魔物を放っておけば、村にも被害が出ると。

 全身を鎧のような装甲に囲まれているが、六本の腕に囲まれている胸部が僅かに装甲が薄いことを歴戦の勘で察したロブは魔物に飛び掛かる。虎の優れたバネを生かしたその一足飛びで一気に距離を詰めた。


「お前を村に行かせる訳にはいかん!」


 A級魔物すら屠る蹴りが叩き込まれる。だが、胸部に当たる直前に腕に防がれてしまう。

 六本の鋭い腕が一斉にロブを襲う。ロブは回避をしようと試みるも、動きが鈍い。


(まずい……体が上手く動かん……!)


 次の瞬間、六本のドリルがロブの腹部を貫く。


「ガフッ!」


 ロブの口から大量の血が漏れる。明らかに致命傷だった。貫かれたロブの体が持ちあげられる。魔物は嬉しそうにロブを捕食しようと口を開ける。

 だが、ロブの目は死んでいなかった。その両腕で、胸部を守る敵の腕をこじ開ける。


「白虎族の長を舐めるなよ! 白閃咆(はくせんほう)!」


 ロブの口から、白い光線が放たれる。その光線は胸部に見事に叩き込まれた。大きな爆発が起こる。


 だが、その胸部には傷一つ付いていなかった。


「なっ……!ば、化物……が……」


 その恐るべき硬度に、ロブの顔が絶望に染まる。


(す、すまない……村の皆。そしてシビル君。君にはなんの礼もできなかったな……)


 魔物は先ほどの一撃に苛立ったのか、無情にロブの上半身に齧りつく。ロブの全身から、力が抜ける。ただ、ロブが捕食される音だけが響く。

 その背後では煌々と木々が燃えている。そして燃えた木々の中から何かが蠢く音が響く。やがて木々から大量の魔蟲が這い出てくる。その数は五百を超えていた。


「ギチチ……」


「ギチ……」


 魔蟲達は皆生まれたばかりで腹が減っていた。周囲には生物が居ない。魔蟲達は食料を求めた。

 魔蟲達の目はシビル達の村へ向く。

 食料を求め、魔蟲達は村へ向かった。人を捕食するために。

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