背負うべき者
シビル達がロブの元を去ってすぐ、近くでやり取りを見守っていた女性がロブに話しかける。顔色は白く病気に侵されていることが分かる。
「まさかあんたが折れるなんてね……」
「族長として、若い者の話を無下にはできんだろうが。それに、もし大樹様が亡くなられるのならば、その最後は俺達が終わらせるべきだと……そう思っただけだ。それに、俺達さえ生きていれば、大樹様のことを語り継ぐことはできる」
「そうね……。私もあんたとなら共に死んでもいいとは思っていたけど、一緒に生きることができるなら、生きたいと思っているわ」
女性はロブの右頬を優しく触れると微笑む。
「世話をかけるな、マデリン。終わったら、彼には改めて礼をしなければ。彼は白虎族の恩人だ。これからしばらく忙しくなるぞ。森の北部はまだ病気に侵されてないらしい。そこに俺達の本拠地を移す。重病人から順に治療してもらえるそうだ。俺は病気に侵された木を伐る作業を、動ける者とする予定だ」
「あんたも、重病人でしょうに……」
マデリンは呆れたような顔をする。
「俺が、したいんだ。大樹様を伐るという大罪は、族長である俺が背負うべきものだ。これは誰にも譲れないもんだ」
「そうかい。無理はするんじゃないよ」
マデリンの言葉にロブは笑顔で返す。
その後白虎族は皆、村を捨て森の北部の開けた場所に移動することになった。
皆薬を貰った後、比較的軽症な者はそこに新たな村を作るため動き始める。流石は森に生きる種族、皆手際よく次々と家を建て始める。
皆大樹と別れることに初めは難色を示したが、ロブの覚悟を感じたためか最後には納得して村を去った。
彼等は皆、大樹と離れ生きるようになり体が軽くなることを感じ、複雑な心境になった。
既に移動から二週間が経過し、村も少しずつ出来上がりつつあった。
「おーい、ライナス。その木、こっち持ってきてくれ」
「はーい」
ライナスは担いでいる丸太を呼んだ男の元へ持っていく。
「ライナス、大樹様の火葬……今日らしいな? お前も行かないのか?」
「族長が、幹部達だけでするって言ってましたからねえ。まだ家が全く足りてないですから、あまり人は割けないんでしょう」
「皆、お別れしてえのになあ」
「まあ、俺は昨日お別れしてきましたから」
「俺もだ」
ライナス達は笑うと、せっせと家造りに戻った。





