表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

173/362

覚悟を

「僕はここに来るの初めてだよ」


「もしかしたら戦闘になるかもしれないんだから、少しは気を引き締めないか」


 森を見たダイヤの呑気な一言を、シャロンがたしなめる。


「ライナス!」


 俺は森に向かって叫ぶも、返事はない。


「ライナス、医者を連れてきた。この森を覆う病は呪樹病というんだ! 薬も持ってきた。だから速く弟さんの元へ――」


「要らん! はやく失せろ!」


 森からライナスの声が響く。


「手遅れになる前に行かないと――」


「要らんと言っているだろう!」


 ライナスが木の枝から俺にとびかかるように飛び降りてきた。俺は地面に押し倒される。


「ぐっ!」


「シビル!」


 シャロンは剣を抜く。


「シャロン、大丈夫だ。俺達は戦いに来た訳じゃない。そうだろう、ライナス」


 俺の言葉を聞き、シャロンは渋々と剣を収める。


「……戦いになるかどうかはお前達次第だ。おとなしく帰れ。今は皆も余裕がない。侵入者に温情をかける余裕がな。それは俺もだ」


 ライナスはどこか辛そうな顔をしていた。心情的にも、身体的に辛そうだ。どうやらライナスも遂に呪樹病にかかってしまったようだ。


「弟さんと狩りをするっていってたじゃないか。薬を……」


「薬など今更……。薬を飲んでも根本的解決にはならないんだろう? 大樹様と居る限りは」


「そうだ」


「俺達は大樹と共に死ぬ。納得もしている。もう放っておいてくれ」


 そう言ったライナスの顔は決して納得している顔ではない。辛さで歪んだ顔だった。


「まだ! 弟さんは救えるんだ! お前が俺の手を取れば!」


「俺だってレイは助けたい! それこそ俺の命を捨てて助けられるなら喜んで捨てる。だが、森を、大樹を愛している皆に…弟を助けたいから森や大樹を捨ててくれなんて言えない…言えるわけねえだろうが!」


 ライナスは俺の胸倉を掴み、叫ぶ。

 馬鹿野郎……。

 俺はライナスの左手を掴むと、左足で地面を蹴り体ごとひっくり返しライナスに馬乗りになる。


「俺は白虎族の人たちがどれだけ大樹や森を愛しているか、完全には理解してないかもしれない。 だけど…弟さんのために命を捨てる覚悟があるなら! そのために皆に頭下げてでも、プライドを捨ててでも救おうと動けよ! 俺も一緒にいくらでも捨ててやる! 本当に大事なものが何か、ちゃんと考えろ!」


「……俺はレイを救いたい。お前なら、救えるのか?」 


「救える。そのために動いたんだ。ライナス……お前も覚悟を決めろ」


「……ああ。俺も覚悟を決めよう。一番大切なものは何か分かっていたはずなのに……立ち向かうのが怖かったんだ。裏切り者の汚名も甘んじて受け入れよう」


 俺はライナスの上からどくと、手を伸ばす。

 ライナスは笑顔で手を取った。覚悟を決めた顔だった。


「行こうか。皆を救うために」


 俺達は再び白虎族の村へ向かった。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、


『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです!


評価ボタンはモチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  『復讐を誓う転生陰陽師』第1巻11月9日発売予定!
    ★画像タップで購入ページへ飛びます★
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ