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共に生きるということ

 その言葉を告げた瞬間、空気が張りつめるのを感じる。

 ロブは怒気をなんとか抑え込もうとしているような迫力を感じる。


「シビルさんよお……、冗談は、時と場合と考えねえと笑えねえぞ」


 と鋭い眼光で俺を睨みつける。


「皆さまが大樹を尊敬していることも、知っております。それでも、今対応しないと白虎族の皆さまの命に関わります」


「ふざけるな! 我々の守り神である大樹様が我々に病気をばらまくなどあり得ん!」


「何も知らんよそ者が、何をほざく! 大樹を欲しい人間の戯言だ!」


 背後に居た男達は大声で吠える。


「……大樹の治療はできないのか?」


 ロブが静かに尋ねる。


「既に難しいそうです」


「てめえ……俺達が自分の命惜しさに大樹を捨てると思っているのか? 俺達は大樹と共に今まで生きてきた。大樹が病気になったからって、じゃあ伐りましょうなんてできる訳がねえだろう。てめえの言うことが仮に正しいとしても、俺達は大樹を見捨てねえ」


 ロブははっきりと言った。

 こうなるかも、とは思っていた。


「このままでは全滅です。森も、貴方達も。これは伝染病です。このままでは貴方達も、その大切な人も死んでしまうんですよ! この病はいずれ帝国中を飲み込みます!」


 これはただ一部族の話にはとどまらない。


「……悪いな。俺達は大樹と共に生きる。それは変わらねえ。もし邪魔をするなら、あんたも敵だ。森と共に生きていねえあんたの言葉は俺達には響かねえ」


 俺はライナスの方を見る。


「俺達は森の民だ。森を見捨てることはできない……」


 ライナスはそう言って、目を逸らした。


「ライナス……」


「話は終わりだ。とっとと帰れ。長居すると命の保証はできねえ」


 ロブの後ろには殺気を溢れさせた男達が今にもこちらへ飛び掛かろうとしている。

 これ以上の長話は命がけになるだろう。


「俺はこれから、帝都から医者を呼んできます。その後、また来ます」


 俺の言葉に返事はなかった。今日の訪問は誰も送ってはくれなかった。





「奴を帰してよかったんですか? この病気が広まるのなら、奴は無理やり伐りに来るかもしれませんよ?」


 先ほど背後で殺気だっていた村の幹部がロブに尋ねる。


「別に構いやしねえよ。もしそうなら……それなりの対応をするだけだ」


 ロブの迫力に、幹部が一瞬身震いをする。

 ライナスは何とも言えない顔をして、黙っていた。


「お前は奴と仲が良かったから、色々思うことはあるだろうがもう忘れろ」


「……はい」


 ロブの言葉に、ただライナスは頷いた。

 ロブはその後、大樹の元へ歩くと、まるで大切な家族に触れるように、優しく触れる。


「大樹様。大丈夫だ。俺が絶対に伐らせなんてしねえ。貴方は我々の守り神なんだ」


 慈しむような目で大樹を見つめていた。

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