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 その夜、村の中央広場では大量の薪を星型に積んだものが、煌々と燃えて皆の顔を照らしていた。

 焚火を使い、ボア肉を炙っているがその匂いが食欲を誘う。


「酒も、肉もあり、空は星が輝いている。これ以上幸せなことはない!」


 そう言って、ロブは酒を呷る。


「確かに。良いこと言いますね」


 俺は肉に齧り付きながら言う。美味しい。謎の香草での味付けだが、ボア肉にとてもあっている。


「ライナスとも仲が良さそうで何よりだ! 今の若い者はあまり外界の者との交流が無いからな。是非仲良くしてやってくれ」


「勿論です。族長もそうですが、白虎族は皆強そうですね」


「族長はA級の魔物も屠る村一番の強者だからな」


 と横で肉を齧っているライナスが言う。


「A級!? 本当か?」


 それが本当なら、怪物並だ。B級の強さを知っている自分からすると信じられない。


「白虎族は獣人の中でも、特に戦闘に特化された種族だからなまあ、そのせいで何度も危険な目にあった。だが、俺達には大樹様が居る」


 とロブが笑顔で語る。その目線の先にはこの村の中央に聳え立つひときわ大きい大樹の姿がある。


「昔ある戦で我が祖先達は敗北し、傷だらけで大樹の近くまで逃げてきたんだ。そこで力尽き、もう終わりだと皆思ったらしい。だが、死ななかった。大樹の加護により、少しずつ回復していったのだ。大樹の実を食べ、大樹の癒しを受け祖先たちは命を救われたのだ。その後も何代も森の守り神である大樹の世話になり生きてきた。我々はこれからも大樹に守られて生きていくんだろう」


 ロブは真面目な顔で語った。大樹の付近には、治癒効果があるらしい。道理で神々しく見えるはずだ。

 彼等は皆大樹を尊敬し、大切に思っていることが言葉の端々から伝わって来る。


「本当はシビルにも、大樹の実を食べて欲しかったんだけどなあ。この時期にはいつも実ができてとっても美味しいんだけど、今年はまだ実らないんだ。また出来たら分けてやるよ」


「ありがとう、ライナス」


 あの立派な大樹の実か、神々しそうだな。


「辛気臭せえ話ばっかしてんじゃねえよ! 飲め!」


 ロブに酒を飲まされる。


「ばかっ! 何やってんだ、族長!」


 馬鹿なお祭り騒ぎは朝まで続いた。


「頭痛てえ……ここどこだ?」


 俺は鈍く痛む頭を押さえながら周囲を見渡す。

 横には幸せそうにいびきをかきながら寝ている族長の姿がある。周りには大量の空の酒樽が転がっている。


 白虎族の人は皆いきなり来た俺に嫌な顔一つせずに歓迎してくれた。

 とても良い関係を築けそうだ。


「起きたか。酒弱いのに飲みすぎだ」


 といって、ライナスが水を渡してくれる。

 気の利く男である。


「いやー、こんな朝まで騒ぐとは思わなかった」


「白虎族は旅人を歓迎する文化があるからな。酒と肉で持て成し、人を囲うんだ」


「素晴らしい文化だな。またお礼しないと」


「構わん。それが習わしだ。族長が寝てる間に出るぞ。いつまでも帰れない」


 俺はふらふらした足取りで、森を出て村へ帰った。

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