白虎族
「もう村だ。シビル」
ライナスに連れられた白虎族の村は俺の想像よりはるかに立派な村だった。
村の中心には超巨大な大樹が村を見守るように聳え立っている。その風格は神樹と言われても信じるくらい気品に満ちていた。
その大樹を囲むように多くの木製の家が建っており、多くの獣人達は行き交っている。大樹の周りにも立派な木が多く生えており、その上にはツリーハウスが建築されていた。
村に居る獣人達は皆子供でも戦士の風格が漂っている。
「凄い、素敵な村だな」
「ありがとう、シビル。自慢の村なんだ。」
ライナスはそう言って笑う。その後族長を探しにどこかへ向かった。
「族長は少し今席をはずしているらしい。家にでも来るか?」
「ではお言葉に甘えようかな」
ライナスについて行くと、大きな木の上に建つ小さいながらも立派なツリーハウスに案内される。
家に入ると、奥から少年が肌の白い美少年が現れる。
「兄さん、お客さん? 珍しいね」
ワイルド系のライナスに比べ、叩けば折れそうなくらい儚げである。サラサラの黒髪で、眉が隠れるくらいの長さ。少し体調が悪いのか、どこか青白い。
「レイ、部屋に戻ってろ。まだ体調も良くないだろう」
「分かった。兄さんは顔は怖いけど、とっても優しいんです。仲良くしてあげて下さいね」
「レイ!」
レイと呼ばれていた少年は叱られると舌を出して奥へ戻っていった。
「弟さん、病気? 顔色悪かったけど」
「……最近、白虎族全体が体調悪くてな。おかげで元気な者は皆狩りに追われている。おそらく移るタイプの風邪だろう」
ただの風邪にしては体調が悪そうに見えたが……。
「そうか。けど仲良さそうで羨ましいな」
俺は弟とちゃんと関係を築けなかったから尚更。
「ああ。可愛い弟だ。うちは親が居なくてな。二人で頑張って生きてきた。レイが元気になったら、一緒に狩りをするのが楽しみなんだ。だが、現実は治るどころか、少しずつ悪化している気さえする」
聞けば既に三か月以上体調が悪いらしい。今では村の人の六割以上が何かしらの体調不良を訴えているようだ。
「それは……酷いな。俺も病気について調べてみよう。何か分かるかもしれない」
「すまないな。このままではまずいと分かってはいるんだが……俺達は外との関わりがない」
詳しくないが、メーティスに聞けば何か分かるかもしれないしな。
俺がどうしようか考えていると、扉が開く音が部屋に響く。
「貴方が新領主かな? 白虎族の族長をしているロブという。我等は森に住んでいるが、仲良くしてくれると嬉しい」
そう言って、現れたとは、四十代大柄の男性だった。
体中が鍛えられていることが分かる。鍛え上げられた太腿は丸太のようだ。髭を生やし怖そうな顔立ちだが、その笑顔はどこか人懐っこさを感じさせる。
「初めまして。新領主のシビルです。白虎族の皆様とも仲良くやっていけたら、そう思っております。これはほんの気持ちですが……」
そう言って、俺は酒を渡す。
皆好きだよね、お酒! 俺はあまり飲めないけど。
ちゃんと森の獣人は酒が好きか、メーティスでリサーチ済である。
「ほう……これはこれは。ありがたく頂くとしよう! せっかく来てくれたんだ。今日は宴会の席でも設けよう。あいにくうちは今風邪が流行っていて参加者は多くは無いが……」
ロブはにやりと笑って言う。これは逃がすつもりは無さそうだ。
「よろしくお願いします」
俺はその後酒を浴びるように飲むことになる。
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