ライナス
森は相変わらず立ち入り禁止の看板が立ててあり、周囲には通れないように軽い柵が立てられてある。森からは鳥の鳴き声が響き、少しおどろおどろしい雰囲気が漂っている。
いつも獣人の見張りが、外を見張っているというが本当なのだろうか。
「おい、こちらを見ているんだろう? 気付いてるぜ?」
と森を見ながらニヒルに言ってみる。
当然返事はない。俺は馬鹿かもしれない。というか馬鹿以外の何物でもない。
村人に見られていたら、可哀想な人のレッテルを張られても仕方ない。
「なぜわかった」
「うおおっ!」
突然、木の上から降ってきた声に驚きの声をあげてしまう。
まじかよ、本当に出やがった。
木から一人の獣人が飛び降りてきた。
年齢は二十歳ほどだろうか。精悍だが整った面長の顔をしている。男にしては少し長い黒髪を後ろ側に伸ばしており、頭には白い猫耳が付いている。
ワイルド系イケメンと言えるだろう。
「今、うおって……」
「いや、気のせいだろう……」
「だが……」
「気付いていたのに、驚くわけがないだろう?」
気のせいで押すしかない。
「そうだよな。もし俺のことを気付いていなかったのなら、森にただ話しかける変な奴になるもんな」
こいつ、俺の急所を正確に抉ってきやがる。スキルは暗殺者か?
「そ、その通りだ。俺はシビル。この村の新領主だ。森に住まう君達とはこれから関わる機会があるかもしれないから挨拶に参った」
「……なるほど。承知した。族長に確認してくるからしばらく待て」
そう言うと、男は一足飛びで木に飛び乗るとどこかへ消えていった。獣人の身体能力は凄まじいことが分かる。
しばらく待つと、僅かに木の軋む音が聞こえてきた。
「待たせたな。族長の元へ案内しよう。俺はライナス。白虎族の者だ」
ライナスは木から飛び降りて言う。
ライナスに案内されながら、森の中を進む。
「一ヶ月くらい前なんだが、道に迷った時に獣人の誰かに道を教えて貰った。あれはライナスか?」
「……多分俺だな。村の外の者が迷ったんだと思っていたがまさか新領主とは」
「この間はありがとう。助かったよ」
「別にいいさ。森には強い魔物も居る。森で死なれても寝覚めが悪い」
どうやら善意でしているらしい。見た目は少し怖そうだが、優しい青年である。
「白虎族の皆は何で生きているんだ?」
「俺達は狩りと、収穫で生きている。ここは果物も獲れるし、ボアも多い。白虎族はもう百年以上この森と共に生きているんだ」
「へえ。確かにライナスは狩りが上手そうだもんな」
「ふふ。自慢じゃないが、俺は一族の中でも三本の指に入るくらい狩りが上手いぞ。弓や槍、なんでも使えるぞ。俺は森を出たことはあまりない。あまり外の者と話す機会もないから新鮮だ。外のことを教えてくれよ」
「俺は元々この帝国に住んでなかったんだ。アルテミアという国から来て――」
となぜここに来たのか話すことにした。ライナスは意外にも話し上手な上にいい奴ですぐに仲良くなった。
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