訓練風景
「ふう……休憩しよ」
汗を拭うと、他の人の訓練風景を見る。
流麗な動きで、剣を振るうシャロンの姿があった。最近は左手に盾を持ち始め、聖騎士らしく防御主体の戦い方に変化が感じられる。
今ではシビル隊の副長であり、部下に剣を教えている姿も見ることがある。今ならB級も倒せるんじゃないだろうか。
「天使の唄」
シャロンの呟きと同時にシャロンの全身に白いもやがかかるも、そのまますぐ霧散してしまった。
シャロンは大剣を地面に勢い突き刺すと、悔しそうに歯を噛みしめている。
「天使の唄って聞いたことあるような……」
「聖騎士では最も有名な魔法だからね。これができると一流の聖騎士って言われている技だね」
と後ろからダイヤが顔を出す。
「ああ、なるほど。だからか聞いたことあるのか」
「聖騎士は基本的に守備が固いスキルなんだけど、天使の唄は防御が異常に固くなると共に、自分に敵の攻撃を集中させる効果があるらしいよ」
「中々危険な技だな……自分に集中させるなんて」
「それが聖騎士ってものなのかもね。命を捨ててでも守りたい者を守る時に、聖騎士は本領を発揮できると言われてるけど。中々難しそう」
「なに。シャロンなら大丈夫だろう。誰よりも、優しく、責任感も強い。きっと天使の唄も覚えて俺達を助けてくれるさ」
「信じてますねえ」
とダイヤが下世話な笑みを浮かべる。
「なに話してるんですか?」
突然声がかかり振り向くと、そこには新人の顔があった。
赤髪のボブカットの若い少女である。綺麗な赤色の瞳を光らせる吊り上がった目、整った目鼻立ちをしているが、その顔は不遜さが現れている。
「ルイズか。何でもない。訓練に戻れ」
「正直私、自分より弱い人に従えないんですけど」
と強い口調で言う。
お前の理屈だと軍師皆ムキムキになるだろボケナス、と思ったが大人だから口には出さない。
「言いたいことはそれだけか? お前がどう思おうが関係ない。命令を聞けないなら、軍規違反で処罰するだけだ」
淡々と返す。
「正直、あんたのこと信じられないって言ってるんだけど?」
後ろにはルイズが従える帝国軍から来た兵士達が控えている。お前ら、俺の部下だろう。歯向かいすぎだろ……。
ルイズは家が子爵らしく、その権力を持って帝国軍でも威張っていたようだ。本当貴族ってろくでもない奴多すぎんよ。
「だから?」
「だからって……」
「お前が俺より偉くなって、俺を顎で使えばいい。それだけの話だろう、ルイズ」
「……ちっ! 行くぞ!」
そういって、ルイズは去っていった。
うーん、やばい上司も困るけど、やばい部下も困るなあ。
俺は溜息を吐いた。
「もうすぐ、盗賊狩りがあるんだが大丈夫かね」
俺は頭を掻く。
メーティスが言うには、二日後、盗賊の群れ百人が村を攻めてくるらしい。
久しぶりの実戦だ。俺は完璧な勝利のための計画を練り始めた。
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