新人たち
それから一ヶ月、青プラティコ製造は特に大きな失敗もなく順調に進んでいった。仕事にあぶれている者達がしっかりと収入が得られるようになったのは大きい。
仕事自体は楽なのでもっと働きたいという者は多かったが、これ以上来てもらってもすることがない。
もう俺が何か監督しなくても順調に青プラティコは製造できるようになった。
とにかく蛙が死なないように徹底したお陰で、今の所目立った衰弱等もない。
暗い村が、明るくなったことが一番嬉しい。お金は大事じゃないとかいう者も居るが、それはちゃんと生きていけるだけの金があって初めて吐ける台詞だ。
生きていく仕事も、金もない者は日々その恐怖に追われながら生きていかないといけない。
顔が暗くなるのも仕方ないだろう。
「おはようございます、領主さん」
「おはよう、今日もよろしくお願いします」
と男が頭を下げる。
「あの……実は謝りたいことがあって」
「ん?」
そう言って、顔をよく見ると、この間俺が、騙そうとしていると騒いだ男だ。
「この間はすみませんでした。ちゃんと村のことを考えて動いてくださったのに、詐欺師呼ばわりしてしまい……」
「いえいえ、それほど皆さんが追い詰められていたってことですから。蛙の養殖、花の栽培を行えば、もっと大きい規模になります。これからも頑張りましょう」
「……本当に申し訳ない。ありがとう……」
男は涙を流しながら、謝罪の言葉を口にした。後から聞いたが、彼は子供が三人もいるが、持っている畑じゃとても一家を養っていけなかったようだ。貯金を切り崩し、男は隣町まで行き、日雇いの仕事で金を稼いでいたらしい。
「この村はこれからです! どんどん忙しくなりますよ」
「任せて下さい! 体力なら有り余ってるんで!」
そう言って、腕まくりして筋肉を見せる男。にっこりと歯を見せていい笑顔だった。男は一礼した後、仕事へ向かっていった。
最近村人皆が明るくなってきた。
「順調みたいだねえ」
ダイヤが完成したプラティコ製造場にやって来る。
「もう俺の監督は必要なさそうだ。シビル隊の方はどうだ?」
「皆、熱心に訓練しているよ。問題児も入ってきたけどね……」
「ああ……あいつか。仕方ないな」
俺は頭をおさえる。俺達が村に来て数日後、俺の直属の軍であるシビル隊百名が到着した。
隊の半数以上はここに来る前からシビル隊だった者のためなんの問題も無い。
だが、帝国軍から派遣された二十五人。これが曲者揃いなのだ。
まず態度がでかい。横柄といってもいいだろう。その態度から左遷されたことに気付いていない。まあ俺も左遷されたんだけど。
「君への態度以外はそこまで悪くはないんだけどねえ」
「ふう……まあ戻るわ」
俺は隊の元へ戻る。
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