起業
「皆。プラティコを青色に変える方法が分かった。この液体に浸せばいい」
メーティスさんが言うには約一日浸さないといけないっぽい。
「長時間の浄化魔法により、プラティコに回復作用が与えられるということだな」
「ああ。おそらくな。教会は人力でやってるんだろう。一日中浄化魔法をかけているのなら、高くなるのも分かる」
教会の治癒師の時給を考えると、一本二千Gになるのも分かる。
「本当に、蛙の吐く液体で青色のプラティコができるのなら、これは大きいビジネスになるわ」
「ネオン、青色プラティコに変更出来たら、販路はありそうか?」
「……勿論。教会からの締め付けで困っている薬師は沢山いるわ。いくらでも見つけられると思う」
「分かった。定期的に青プラティコを製造するから、買取に来てくれないか?」
「別にいいけど……シビルが全部するの?」
「いや、領主としてこの事業の管理はするが、村人に全ての作業は担ってもらう」
村人の仕事を作るためにやっているのだ。俺が全てやっていては意味が無いだろう。
こうして、村をあげた大事業、青プラティコ製造事業が始まった。
早速集会場にいる村長に青プラティコ製造事業を始めることを伝えると、泣いて喜んでくれた。
「あ……ありがとうございます……! この町で新規の事業なんて言葉を聞けるなんて思いもしませんでした。できることなら、何なりとお申し付けください」
「正直な所、今村で仕事にあぶれている者は何人ほどいる?」
「百五十人といったところでしょうか?」
あぶれすぎだろ。無職ばっかじゃねえか。
「ここで生きていくのに必要な金額は?」
「……そうですなあ。一人月三万G程あれば十分でしょう」
食べ物は皆ある程度自分で作っている分、費用は少ないらしい。家賃も皆かからないのも大きい。
月四百万五十万Gなら、いける……!
「湖のほとりに、製造用の建物を建てたい。大工の手配を頼む。後、村人を皆集めてくれ。人員を募集する」
「はい! すぐさま!」
村長は笑顔で返事をすると、外へ出ていった。
村の中央の広場に少しずつ人が集まって来る。皆覇気がなく、新領主が変なことでも始めるのだろうか、と不安そうな顔をしている。
しばらくして、ほぼ全員が揃ったことを確認して俺は口を開く。
「俺はこの村の新領主のシビルだ。これからは俺がこの村の管理を行う。既に村長からこの村の現状は聞いている。主要産業である鉱山での発掘が失われ、村の存続すら危ういということも。俺はこの村の現状を変えるため、新規事業を行う。そのため、人員を募集する! 給料は一日五時間で五千G!」
「ええ! この村で新規の仕事が!?」
「本当か?」
と村人がざわめく。
「こんなの嘘に決まってる! あんた俺達を騙そうとしてるんだろう!」
そう声を上げた男は、村に来て最初に話しかけた男だった。警戒心が強い。
「俺は領主なんだから、村人を騙すメリットなんてないだろう? このままじゃ村自体が無くなってしまう。それは領主の俺としても困る訳だ。ならそのために新しい仕事を始めるのは何もおかしいことじゃないだろ」
「そっ……それはそうだが……」
「この事業は多くの村人の収入を助けるという意味合いが大きい。真面目に働きたい者は基本的に全員採用するつもりだ。そのため、一人当たりの労働時間は減るかもしれないが、そこのところは我慢して欲しい。話は以上だ」
俺の言葉を最後に村人達が解散していく。悩んでいる様子の村人も多かったが、結局百五十人弱の村人が残った。
聞いていた通り、男が八割以上を占めている。元鉱山で働いていたためか、割とガタイがいい。
「とりあえず、全員採用する。だが、あまりにも態度が悪い者がいた場合はその限りではない。またこれはこの村の今後主要産業となる大切な物だ。真似することは簡単なため、勝手に真似をしない、内容を口外しない旨の誓約書を書いてもらう。破ったものは村を追放させてもらう。一部の欲張りが私腹を肥やさないための処置だ。悪いが了承してくれ」
「そ、そんな……俺達はちゃんとお金さえもらえればそんなことしませんよ」
村人達が少し動揺しながらも答える。
「では、皆に仕事内容を伝える。聞いてくれ――」
俺は村人達に仕事内容を伝える。
「そんな簡単なことですか?」
「ああ。ではよろしく頼む」
こうして従業員百五十人を雇う組織が誕生した。
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