石鹸蛙
「という訳で、皆さんの意見を集めたいと思います。各自アイデアを出してください」
俺は仲間に丸投げする。いや、勿論メーティスに尋ねもするけどさ。四人でプラティコと蛙を入れた木箱を囲う。
「はいっ!」
「素早い挙手、素晴らしいですね。はい、ダイヤ君」
「塩水に浸すとか」
「なるほど」
『プラティコを塩水に浸すと青色に変わる?』
『ノー』
「残念。違うらしい」
「踏みつける」
シャロンが手を上げずに話す。過激派なアイデアである。
『プラティコを踏むと、青色に変わる』
『ノー』
「残念!」
眉を僅かに顰めるシャロン。ボケじゃなかったのか……。ネオンが恐る恐る手を上げる。
「はい、ネオン君」
「話の腰折って申し訳ないんだけど、その箱何? さっきからゲコゲコ言ってるんだけど」
「ああ、これか。これも新しいうちの産業になってくれる蛙だ。名称は不明」
そう言って、木箱の上を開ける。
「見たことないわね……。父の商会は動物も扱ってるんだけど。メーティスがこの町の産業として使えるって言ってるんだから、何かしら価値があるんでしょうけど」
だが、両方ともどうしたらいいかさっぱり分からん。このままじゃ宝の持ち腐れである。
『蛙はそのままでも高く売れる?』
『ノー』
分かってましたよ。野に返すか、こいつ。
皆してうんうんと唸る。だが、有効なアイデアは出て来ない。
「ねえ。シビルはメーティスの質問に、この村の新規事業になるような生物が何か? を尋ねたんだっけ?」
ダイヤが尋ねてくる。
「ああ」
「なら、プラティコと蛙を組み合わせろってことなんじゃないの? 蛙は数が少ないし、いくら高値でも知れてると思うんだよね。蛙を使って、プラティコを青色に変えられるんじゃ?」
確かにダイヤのいうことは理にかなっている。
『この蛙を使えば、プラティコを青色に変えられる?』
『イエス』
きた!
「流石だ、ダイヤ! その通りだ。蛙を使えばプラティコを青色に変えられるらしい!」
大きな一歩だ。
『蛙にプラティコを食べさせれば青色に変わる?』
『ノー』
うーん。
「……一緒にゆでるか」
「ゲコォッ⁉」
俺の呟きを聞いた蛙が箱の中で暴れる。
『蛙とプラティコを一緒に茹でると青色に変わる?』
『ノー』
ゆで汁ではダメなのか。いい線いってると思ったんだが……。
「冗談だ、蛙。茹ではしない」
「一緒に茹でるのじゃ駄目なのね」
「ああ、残念ながら」
『蛙の口内に一日入れておけばプラティコは青色に変わる?』
『ノー』
『蛙の血に浸せばプラティコは青色に変わる?』
『ノー』
猟奇的すぎたか……。
再び皆でうんうん唸り始める時間がやってきた。
外では話しているせいで、色々な人がこちらに寄ってきたが、誰もプラティコを青色にする方法は知らないらしい。そもそもこの蛙を知っている人があまりいない。
村長であるバギンズも、話を聞いたのかこちらにやってきた。
「これはこれは石鹸蛙とは。懐かしいですのう」
そう言って、目を細めながら微笑む。
「村長さん、この蛙知ってるんですか?」
「勿論。子供の頃は、石鹸を買うお金も無かったからこの蛙に助けられたもんですじゃ」
話が全く見えない。この蛙と石鹸の繋がりが分からない。
「石鹸蛙?」
「正式名称は知らんのですが、石鹸蛙と年寄りは皆呼んでおるよ。蛙の舌を軽く引っ張ると、驚いて液体を吐くんですが、なぜかそれで洗うと手が綺麗になるんじゃ」
「ほおー」
蛙の吐いた液体で、綺麗になるとはとても思えないが、試してみるか。
俺は木桶を貸家から取ってきた後、蛙の舌を軽く引っ張る。虐待じゃないよ?
蛙は一瞬震えた後、大量の液体を木桶に吐き出す。
「うーん、ぱっと見は只の唾液だな。手を……」
他の三人に目を向けると、皆顔を逸らす。ひでえや。
俺は覚悟を決めると、液体に手を入れる。
「本当だ!」
俺は手から汚れが落ちるのを感じた。サラサラだ。石鹸よりも効果があるかもしれない。
「この水、魔力を含んでいるね。多分聖魔法に近い」
その様子を見ていたダイヤが呟く。
「浄化魔法を宿しているようだな。浄化魔法を宿した水など聞いたことがない。中々珍しい蛙だ」
シャロンが感心したように言う。
阿保面の割に、どうやらこの蛙は凄いっぽい。蛙は舌を引っ張られたことが不満なのか、こちらを睨みつけている。許せ、蛙。
浄化魔法……教会……、俺はいくつかのピースが繋がったような感覚を得る。
『この液体に黄色のプラティコを浸せば色が変わる?』
『イエス』
これだ! 俺はようやく見つけた解決法に口角を上げた。
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