ゲコ
「もう一つの目的である動物は湖に生息しているらしい。行こう」
とりあえず湖に向かうことにした。
『新規事業になるのはこの魚?』
『ノー』
『新規事業になるのはこの魚?』
『ノー』
『新規事業になるのはこの魚?』
『ノー』
手当たり次第に目に入った魚をメーティスで確認するも、全然見つからん。
既に面倒臭くなってきた……。だが、このままじゃ夜逃げされる小さな村の領主で俺の人生が終わってしまう。正直これじゃただ閑職に追いやられた人である。洒落にならん。
「あそこになんか珍しそうな魚が居るよ!」
ダイヤの指さす先にゴールデンなお魚さんがいらっしゃる。綺麗な金の鱗はまさしく私は価値がありますよ、というアピールに他ならない。
『新規事業になるのはあの魚?』
『ノー』
ただの見掛け倒しやないかい!
だいたいこんなクソデカイ湖で一種類の魚、見つけられる訳ねえだろ!
『新規事業になるのは貝?』
『ノー』
やっぱ違うか。俺は疲れで膝をつく。
「ゲコ」
いや、ゲコじゃねえから。
顔をあげると、全長三十センチほどのデカイ蛙が目の前にいた。肌が白く、ぬめぬめしている。頬の所だけが赤くなっているが、可愛くない。
「しっし。今忙しいのよ俺は」
手で追い払おうとすると、苛立ったのか蛙の舌でビンタされる。腰の入ったいいビンタだった。
「この……クソ蛙が!」
俺の怒りを察知したのか、蛙はぴょんぴょんと俊敏な動きで湖に戻っていった。
「本当に魚なのか? もう何十種類と確認しただろう?」
魚を見つけるのに疲れたシャロンが言う。
「貝でもないみたいなんだよ……」
『新規事業になるのは魚?』
『ノー』
まじか……。魚じゃねえのかよ……。
「魚じゃないっぽい……」
俺は溜息をつきながら皆に伝える。
「最初にそこは確認しろ……」
シャロンが呆れたように呟く。
いやー、本当におっしゃる通りです。だが、魚じゃないなら一体……。
「もしかしてさっきの蛙だったりしてねえ」
とダイヤが笑う。
「いや、それはないだろー」
ないよね?
嫌な予感がしつつ、一応確認してみる。一応ね。
『先ほどの蛙は新規事業になる?』
『イエス』
OH……!
なんてこった!
俺は急いで周囲を見渡すも、既に先ほどの蛙は居ない。
「え……もしかして?」
恐る恐る尋ねるシビル。
「その、もしかしてだ。俺達の探し物はあの蛙だ」
あの蛙でどうやって稼げって言うんだ。
幸いあの蛙はそこまでレアでもないらしく、少し探すとすぐに見つかった。
シャロンは触るのを嫌がったため、俺が捕まえたが、その際何度も舌でビンタされてしまった。
木箱に無理やり閉じ込める。
「これでなんとか任務は完了だ」
「ねえ、シビル。あの蛙と、花でどうやって稼ぐの?」
「……そりゃあ、売るんじゃない?」
俺に聞かないで欲しい。いや、俺が答えるべきなんだけどさ。
あんな蛙、ゆで蛙にするくらいしか思いつかない。
まあ、それはネオンに聞けば分かるだろう。俺達は村に戻る。
だが、俺の予想は見事に裏切られることとなる。
「あ、プラティコじゃない。え、売れないわよ。そこらへんにあるし」
早速村に来ていたネオンに花を見せると、無情な返事が返ってきた。
え? 話が違うじゃない……。
俺の村立て直し作戦は早くも暗礁に乗り上げた。
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