新規事業
翌日。
「コルクさん家、夜逃げですって」
「畑も小さかったものねえ」
おばさん達が家の前で話している。今俺の心を悩ませるものランキング堂々一位は、村人の夜逃げである。
色々考えたが、この村の利点はあの広大な自然だろう。
といっても、観光地化は難しい。なにより客が増え始めるまでの長時間、この村が耐えられるとは思えない。
自然の素材を売るしかない。できれば養殖も行い、継続的な商売にしたい。
普通ならどれが価値があるなんて、分からないだろう。だが、俺にはメーティスさんがいる。
『周囲五キロ以内に、村の新規事業になるような生物はある?』
『イエス』
やはりあったか。
『それは複数?』
『イエス』
『三以上ある?』
『ノー』
ということは二つあるのか。
『それは動物も入っている?』
『イエス』
『全て動物?』
『ノー』
一つは動物なのか。もう一つはなんだ?
『もう一つは植物?』
『イエス』
なるほど。動物と植物が一つずつか。二つあれば、事業も安定しやすそうだ。
「シビル、解決策が見つかったようだな」
俺の様子を見ていたシャロンが笑う。
「ああ。新規事業になりそうな植物と動物が見つかった。それを取りに行こう」
「メーティスか。やはり文官の方が向いているスキルだ」
商人が一番向いている気がする。再就職するなら商人だわ。
「俺も日々感じているさ」
俺は、ダイヤとシャロンを連れて外へ向かった。今日はネオンが顔を出す日だ。それまでに見つけておきたい。
「植物の名前分かる?」
「分かる訳ないだろ……」
「ですよねー」
外に颯爽と出たものの、植物を見ても名前が分からん。こうなると植物を見つけ次第、これかメーティスに確認するしかない。
『新規事業になる植物って花?』
『イエス』
『その花は森にある?』
『ノー』
森じゃないなら平地か。花っていうと昨日見た黄色い花くらいしか覚えていない。あれか?
とりあえず、花畑いってみるか。
馬を駆り昨日の花畑へ向かう。
「綺麗だな……」
シャロンもこの美しい光景に心を奪われたようだ。見渡す限り、黄色い花が広がり風により揺らめいている。
『この花は新規事業になる?』
『イエス』
「これだ!」
俺は花を掴み、叫ぶ。
「へえ。これか。幸先がいいね! 数も多いし」
ダイヤが花を見ながら言う。
「見渡す限り花だからな。それにしてもこれが売れるなんて、何が売れるか分からんな」
「だねえ。僕この花見たことある気がするけど……きっと違う花なんだろうねえ。正直区別なんてつかないし」
「俺もさっぱり分からん。とりあえず何本か持って帰ろう」
俺達はいくつか花を採り、続いて生物を探す。
『その生物は森にいる?』
『ノー』
『平地に居る?』
『ノー』
『湖に居る?』
『イエス』
湖か。となると魚か? それとも貝? 貝はそもそも生物なんだろうか。
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