滅びゆく村
村の名前は、コラク村と言うらしい。
広大な土地にぽつぽつと煉瓦造りの小さな家が点在している。道も舗装されておらず、馬や人によって踏みしだかれることによってできた小道が各家を繋いでいる。
家の周りには、田畑が広がっており、現在は農業でこの村は成り立っているのだろう。
俺はシャロン、ダイヤを連れて村を見渡しながら進む。ネオンはたまには来てあげるわ、と言って帰ってしまった。悲しいけど仕方ないね。
外敵対策は、動物避けの柵くらいだ。
「のどかだけど、やっぱり活気がないな……」
畑すぐそばの切り株に腰を下ろしている三十代の男に声をかける。
「こんにちは。この村の領主になるシビルと言います。村長さんは知りませんか?」
男は顔を上げるも、覇気もなく少しやつれている。
「……知らねえよ」
男はそう呟くと、どこかに消えていった。
中々やぐされていらっしゃる。
「仮にも次期領主に酷い態度だな」
シャロンが顔を顰める。
「う~ん、皆余裕がないね。この村は思ったよりもやばいのかもしれない」
早く対策を打った方が良さそうだ。
しばらく村を歩くと、中央に煉瓦造りの大きな館を見つける。他の家に比べてしっかりした造りでどうやら村の集会所らしい。
中に入ると、好々爺という言葉が似あう老人が迎えてくれる。
中もしっかりした造りで、なぜか地下室まである。集会所は避難所としても運用されているようだ。
「貴方が新しい領主様ですな。儂は村長のバギンズです」
老人が笑顔で手を伸ばしてくる。畑仕事している人特有の豆がつぶれて皮膚が厚くなった固い手だった。
「こちらこそ、よろしくお願いします。帝国軍所属のシビルです。今はパンクハット軍に所属しております。早速ですが、この村の現状をお伺いしたい」
俺の言葉を聞くと、バギンズの顔が曇る。
「それなんですが……この村は現在危機に瀕しています。この村の主要産業はご存じですか?」
「いや、知らないですね」
「隣の村との間にある鉱山での発掘作業です。何十年も鉱山の発掘によりこの村は成り立ってきました。ですが、ここ二年前に遂に掘り尽くしてしまったのです」
なるほど。発掘が主な産業なら、廃坑と共に主要産業が廃れたのも分かる。
「見た所、農業もしていたみたいですが」
ここに来る間、村を見て回ったが農業の気配があった。それで生きていけばよいのでは。
「農業は発掘作業に従事していない年寄りや女性陣が行っていたのです。男衆は皆、仕事を失い、今は農業を手伝っていますが昔ほどの稼ぎは無く……」
発掘作業をしていた男達が余っている訳か……。
「掘り尽くす前から、時間がないのは分かっていなかったのか? 予め対策をなぜ打たなかったんだ?」
シャロンが尋ねる。火の玉ストレートすぎる質問である。
「仰る通りで……。だが、皆農業があるからなんとかなると楽観的だったんです。ですが、結果はこのざまです。最近は税も払えなくて夜逃げする者も出ています。夫婦の喧嘩も増え、雰囲気も悪く。税金も難しく……」
と言って、上目遣いで俺を見るバギンズ。おい、爺さんの上目遣いなんて要らんぞ。逆になんでそれで税を優遇してもらえると思ったんだ。
「悪いが、税金は免除なんてできん。国に治める分は必ず必要だからな。だが、現状はよく分かった。この村の今後の産業についてだが、なんとか考えよう」
「お願いします! このままじゃコラク村は終わりです!」
凄い勢いで喰いついてくるバギンズ。言ったものの俺は特にアイデアはない。だが、このまま領主として放置もできまい。なんとか考えよう。
「どうせ何もできない癖に……」
と村長の後ろに座っていた少年が呟く。
「おい! 失礼だろう! す、すみません、良く言い聞かせておきますんで」
バギンズが少年を叱る。
「前の領主も結局何もしなかったじゃないか! この村はもう終わりなんだ!」
少年は叫ぶと、勢いよく扉を開け、集会場から去っていった。
「……すみません。あいつの家ももうぎりぎりでして……。きつく叱っておきますんで、なんとか許してやって貰えんでしょうか?」
「気にしてませんよ。皆、追い詰められてるんでしょう」
俺はそう言って、席をたった。
「シビル、何かアイデアあるの?」
集会所を出ると、ダイヤが俺に尋ねてくる。
「何にもない。が、なんとかしないとまずい。もうじき部下達も来るしな」
百人いる新生シビル隊もじきに村に到着するだろう。
俺はこの日から頭を悩ませることとなる。
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